春雷ブロッサム

「また子どもの話なら、今度にしてくれよ。疲れてるから、早くシャワー浴びて寝たい」

先に口を開いたのは達也の方だったが、わたしは何も言い返さず、ローテーブルを挟み達也と対面にラグの上に座る。
そして、静かにある物を取り出すと、達也によく見えるようにローテーブルに一枚一枚その"ある物"を並べていった。

"ある物"とは、度々ランチバッグに潜んでいた付箋たちだ。

それを見た達也は、声にならない驚きから前のめりになっていたが、特に言い訳もせず「な、なんだよ。これ」と何も知らない素振りで視線を逸らせた。

「これ、達也が持って帰って来たランチバッグの中に入ってたの」
「ふーん···、それで?」
「···お弁当、食べてくれてなかったんだね」

付箋に視線を落としながらわたしがそう言うと、達也は大きな溜め息を吐いた。

そしてソファーの背もたれにドンッと勢い良く寄りかかりながら、「毎日毎日、あんなもん食ってられるかよ」と吐き捨てたのだ。

達也の口から吐き出てきた本音に、わたしの視界が滲んでいく。
しかし、泣いたら負けだと思った。

わたしは今にも溢れ出してきそうな涙をグッと堪え、震えそうな声を正そうと咳払いをした。

「この付箋は、古川さん···だよね?」
「さあな、俺は知らん」

悪怯れる様子もない達也の様子に、わたしはもう愛されていないのだと実感した。

本当は、少し期待してしまっていた。
達也が謝って「違うんだ!」と言い訳をしてくれる事を···―――

少しでもわたしに気持ちが残っているなら、否定してくれると思っていた。
しかし、その少しの期待さえも意図も簡単に裏切られてしまった。

「―――別れよっか」

わたしの方から切り出した別れ。
その言葉に達也はあっさりと頷き、5年のわたしたちの結婚生活はあまりにも簡単に冬の終わりと共にピリオドを打ったのだった。

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