想定外につき、対処不要
会議室から出ると、社長は俺のほうを向き、「朝から悪いね、まだ時間はあるかい?」と言って、ドアを静かに閉めた。俺は直ぐに時計を確かめ、「はい。お付き添いします」と返した。すると社長が、「じゃあ、行こうか」と言って、俺より先を歩いて行った。
そこからエレベーターに乗り、上の階へ進むにつれ、どこへ行くかを察した。社長の後に続いて着いた場所は、予想通りの社長室だった。社長はそこでもドアを開いて俺を促し、室内に居た秘書に目配せをして、デスクの前に置かれた来客用の右側のソファーに腰を下ろした。
俺はテーブルを挟んで置かれたソファーに腰を下ろし、社長に視線を向けたところで、秘書が来て、テーブルの上に珈琲とケーキ、そしてフォークを置いた。
「甘い物に目がないんですね」思わず俺が口にすると、社長は少し胸を張り、「これは特別だからね。食べてみて、絶対気に入るから」と言ってフォークを手に、ケーキを口に運んでいた。
その様子を窺いながら、俺もケーキを一口食べてから、「とても美味しいです」とフォークを置き、珈琲を手にした。
「そりゃそうだよ。璃乃が作ってくれたんだから」
社長の明るい声に、口にした珈琲が熱く、思わずカップを離した。一呼吸吐いてから、再び口に含んだ。
そこで俺が目を向けると、社長はフォークを置き、おもむろに口を開いた。
「さっきの話だけど、立花くんは君と居た時は支社だった。でも、とうの昔に子会社に移動してる」そう言って、社長は珈琲を飲み、カップを静かに置いた。それと同時に俺もカップを置いて、続きを窺うと、社長はフォークを手にしたまま、口を開いた。
「その子会社は末端のほうで、詳しい情報は上がって来てないけど、以前から問題を起こしてるという噂は、僕の耳にも届いていた。今回は僕の力不足だった。本当に済まない」
社長の声は沈んで、顔色も同じように見えた。
だが、俺は話の内容より先に返した。
「いえ、社長には感謝しております。人事部の件もそうですが、私の対応不足で、ご迷惑お掛けしました。申し訳有りません」
「何言ってるの。全く、君は堅すぎるねぇ……」と社長は明るく言って、ケーキを口に運び始めた。そして二口ほど食べると、社長は俺のほうを向いた。
「立花くんは海外に飛ばすことにした。辞めさせるよりも、そっちのほうが簡単だから」と社長は口の端を軽く上げ、直ぐに戻してから、ケーキを食べ始めた。
「そうですか。ですが、ご無理はなさらないようにお願いします」と俺が言うと、また社長はこちらを向き、視線を戻してから、ケーキにフォークを入れた。
「早く孫の顔が見たいなぁ……」と社長が静かに呟いたので、俺は「お祝いを考えておきます」と言うと、社長は俺の顔を見て、軽く鼻息を飛ばした。
俺は少し首を傾げたが、社長が楽しそうなのを見て、何も言わずに残りのケーキを食べ進めた。それは程よい甘さで、レモンの爽やかさが口内に広がっていた。
そこからエレベーターに乗り、上の階へ進むにつれ、どこへ行くかを察した。社長の後に続いて着いた場所は、予想通りの社長室だった。社長はそこでもドアを開いて俺を促し、室内に居た秘書に目配せをして、デスクの前に置かれた来客用の右側のソファーに腰を下ろした。
俺はテーブルを挟んで置かれたソファーに腰を下ろし、社長に視線を向けたところで、秘書が来て、テーブルの上に珈琲とケーキ、そしてフォークを置いた。
「甘い物に目がないんですね」思わず俺が口にすると、社長は少し胸を張り、「これは特別だからね。食べてみて、絶対気に入るから」と言ってフォークを手に、ケーキを口に運んでいた。
その様子を窺いながら、俺もケーキを一口食べてから、「とても美味しいです」とフォークを置き、珈琲を手にした。
「そりゃそうだよ。璃乃が作ってくれたんだから」
社長の明るい声に、口にした珈琲が熱く、思わずカップを離した。一呼吸吐いてから、再び口に含んだ。
そこで俺が目を向けると、社長はフォークを置き、おもむろに口を開いた。
「さっきの話だけど、立花くんは君と居た時は支社だった。でも、とうの昔に子会社に移動してる」そう言って、社長は珈琲を飲み、カップを静かに置いた。それと同時に俺もカップを置いて、続きを窺うと、社長はフォークを手にしたまま、口を開いた。
「その子会社は末端のほうで、詳しい情報は上がって来てないけど、以前から問題を起こしてるという噂は、僕の耳にも届いていた。今回は僕の力不足だった。本当に済まない」
社長の声は沈んで、顔色も同じように見えた。
だが、俺は話の内容より先に返した。
「いえ、社長には感謝しております。人事部の件もそうですが、私の対応不足で、ご迷惑お掛けしました。申し訳有りません」
「何言ってるの。全く、君は堅すぎるねぇ……」と社長は明るく言って、ケーキを口に運び始めた。そして二口ほど食べると、社長は俺のほうを向いた。
「立花くんは海外に飛ばすことにした。辞めさせるよりも、そっちのほうが簡単だから」と社長は口の端を軽く上げ、直ぐに戻してから、ケーキを食べ始めた。
「そうですか。ですが、ご無理はなさらないようにお願いします」と俺が言うと、また社長はこちらを向き、視線を戻してから、ケーキにフォークを入れた。
「早く孫の顔が見たいなぁ……」と社長が静かに呟いたので、俺は「お祝いを考えておきます」と言うと、社長は俺の顔を見て、軽く鼻息を飛ばした。
俺は少し首を傾げたが、社長が楽しそうなのを見て、何も言わずに残りのケーキを食べ進めた。それは程よい甘さで、レモンの爽やかさが口内に広がっていた。