想定外につき、対処不要
 俺は暫く犬と猫に占領されていたが、時間が経つにつれ、それぞれが気に入った位置に戻っているようだった。漸く解放された俺は、ふと時計を見て、途端に不安が浮かんだ。

 耳を澄ませても何も聞こえないし、どこかに居るような気配も感じられない。まさか……と思い、その場から立ち、リビングから抜けて、浴室を探しに行った。しかし、それらしい場所で躊躇ってしまった。

 家の中を見て回るのは好ましくはない。だが、悠長なことを考えている場合でもない。

 そこで、俺は力強い息を吐き出し、静かに扉を開けた。直ぐに見回してから、扉を閉め、次の部屋に向かって行った。

 玄関先から続く廊下の両脇には、右側に部屋が1つ、左側に2つあった。どこかを開けて確かめることは可能だが、余り中を見たくはない。

 俺は各部屋の扉を凝視し、右側の部屋の扉の前に行って、足を止めた。ノックをするか否か、迷ったが、俺はおもむろに口を開いた。

「璃乃……?」

 やはり、返事は無かった。

 なぜだ。外に出掛けた……とは思えない。ベランダに隠れていることは、有り得ない。この家の中に彼女は必ず居る。

 俺はその場で軽く息を吸って、そのまま止めた。

 すると、部屋の中から微かに物音が聞こえ、俺は息を吐き出した。静かに扉を開け、少しだけ覗いてみた。

 彼女はベッドの上に仰向けに寝ていて、膨らんだ胸の辺りで手を組んでいた。

 その様子に、俺は思わず苦笑いをし、声を掛けた。

「何してるんですか」

「神様に祈ってる」

 そう答えた彼女の声は明るく聞こえ、俺は軽く息を吐いてから、返した。

「膝をついたほうが様になります」

「そうだね……」彼女は少し溜息を吐き、身体を起こしてから、こちらを見てきた。でも、直ぐに目を逸らした。

 俺はそれを見ながら、確信していた。

 彼女は何かを隠している。そう気付いたところで、裏付ける物が見当たらなかった。

 とにかく、ここは会話をして探るしかない。

「何か飲み物を持って来ましょうか」

「……いらない」

 彼女はこちらを見てから、直ぐに目を逸らし、大きな溜息を吐いた。

 ダメだ。完全に怒っている。いや、待て。まだ判断するには早い。

 しかし、これ以上尋ねれば、彼女は口を開かなくなるかもしれない……。

 そう考えながらも、俺は声を掛けた。

「何か、私に出来ることはありますか……?」

「……そばに来て」

 彼女の言葉に口を開きかけたが、直ぐに閉じて、一呼吸置いてから、静かに彼女の傍に行った。

 すると、彼女が見上げてきて、俺は視線を合わせるように、彼女の前に腰を下ろした。
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