想定外につき、対処不要
それからタクシーで自宅に帰ると、正面玄関の先にあるガードパイプに誰かが腰掛けていた。その人は灰色のパーカーを着ていて、フードを被っていたが、どう見ても大きいサイズで、所々弛んでいた。
俺はタクシーを降りたあと、その姿を軽く眺めて、漸く彼女だと気付いた。あの日貸したパーカー姿に少し恥ずかしくなり、どう声を掛けようかと考えながら近づいた。でも……。
「璃乃」
そう口にした時、彼女は直ぐにガードパイプから降り、こちらに振り返って言った。
「遅いよ、君」
「済みません」
咄嗟に俺は答えてみると、彼女の姿は目のやり場に困る格好をしていた。それはパーカーを着ただけで、膝上から少し太ももが覗き、素足にスニーカーを履いた状態だった。
なぜだ。その格好は可愛い。だが、何よりも先に口を開いてしまいそうになる。いや、今はとにかく目に付かないよう部屋に行くべきだ。そう考えて、彼女の手を取り、軽く握って言った。
「寒いので早く行きましょう」
「はーい」
俺は周りを凝視しながら、部屋まで辿り着いたが、どうにも考えがまとまらなかった。そこで、酒を飲んできた事を思い出し、彼女に声を掛けた。
「済みませんが、先にシャワーを浴びてきます。酒の匂いを落としたいので」
すると、彼女はこちらに近寄り、背伸びをして、匂いを嗅ぐような素振りをした。そして、軽く首を傾げたあとで、そのまま俺のほうを見て、口を開いた。
「木崎の匂い……。まぁ、いいや。行ってらっしゃい」
いや、待て。今、何を言い淀んだ?まさか、加齢臭か……?他人から指摘されたことは無いが、彼女は気づいていたのかもしれない。そう思い、俺は少し急ぎ足で浴室へ向かった。
それから浴室で念入りに身体を洗い、着替えを済ませてから、洗面所で口臭ケアを2回行った。眼鏡も綺麗に拭き、静かに掛けた後で、くまなく全身を確認してから、浴室を抜け出した。
しかし、リビングに彼女の姿はなく、俺はそこで寝室のほうへ足を向け、息を潜ませながら歩いて行った。
そして、寝室のドアに手を掛け、音を立てないよう、静かに開いた。
すると、彼女がベッドに仰向けに寝ているのを目にした瞬間、直ぐに身体が起き上がり、その口が開いた。
「幽体離脱」
思わず吹き出したが、次第に口元が緩んで、そのまま彼女の元へ足を進めた。彼女は同じような顔をしながら、俺が傍に来るのを待っているようだった。
「それをするなら、もう一つ身体が必要です」そう言って、俺はベッドに腰を下ろし、彼女を抱き寄せた。
僅かな隙間を埋めるように、背中に手を優しく添え、その温もりを確かめていた。
俺はタクシーを降りたあと、その姿を軽く眺めて、漸く彼女だと気付いた。あの日貸したパーカー姿に少し恥ずかしくなり、どう声を掛けようかと考えながら近づいた。でも……。
「璃乃」
そう口にした時、彼女は直ぐにガードパイプから降り、こちらに振り返って言った。
「遅いよ、君」
「済みません」
咄嗟に俺は答えてみると、彼女の姿は目のやり場に困る格好をしていた。それはパーカーを着ただけで、膝上から少し太ももが覗き、素足にスニーカーを履いた状態だった。
なぜだ。その格好は可愛い。だが、何よりも先に口を開いてしまいそうになる。いや、今はとにかく目に付かないよう部屋に行くべきだ。そう考えて、彼女の手を取り、軽く握って言った。
「寒いので早く行きましょう」
「はーい」
俺は周りを凝視しながら、部屋まで辿り着いたが、どうにも考えがまとまらなかった。そこで、酒を飲んできた事を思い出し、彼女に声を掛けた。
「済みませんが、先にシャワーを浴びてきます。酒の匂いを落としたいので」
すると、彼女はこちらに近寄り、背伸びをして、匂いを嗅ぐような素振りをした。そして、軽く首を傾げたあとで、そのまま俺のほうを見て、口を開いた。
「木崎の匂い……。まぁ、いいや。行ってらっしゃい」
いや、待て。今、何を言い淀んだ?まさか、加齢臭か……?他人から指摘されたことは無いが、彼女は気づいていたのかもしれない。そう思い、俺は少し急ぎ足で浴室へ向かった。
それから浴室で念入りに身体を洗い、着替えを済ませてから、洗面所で口臭ケアを2回行った。眼鏡も綺麗に拭き、静かに掛けた後で、くまなく全身を確認してから、浴室を抜け出した。
しかし、リビングに彼女の姿はなく、俺はそこで寝室のほうへ足を向け、息を潜ませながら歩いて行った。
そして、寝室のドアに手を掛け、音を立てないよう、静かに開いた。
すると、彼女がベッドに仰向けに寝ているのを目にした瞬間、直ぐに身体が起き上がり、その口が開いた。
「幽体離脱」
思わず吹き出したが、次第に口元が緩んで、そのまま彼女の元へ足を進めた。彼女は同じような顔をしながら、俺が傍に来るのを待っているようだった。
「それをするなら、もう一つ身体が必要です」そう言って、俺はベッドに腰を下ろし、彼女を抱き寄せた。
僅かな隙間を埋めるように、背中に手を優しく添え、その温もりを確かめていた。