奇怪な天才は、私の不運をゼロにする。
「そうだ、柚葉さん。僕が甘いものを食べているのは柚葉さんのためなんですよね。ならばお礼として、柚葉さんが僕にタルトを食べさせてください」

何を言ってるんだ、この人は。
そう心の中で呆れながらも、月島君が放つ独特の空気に抗えず、私は足を進めた。

箱の中から小さなタルトをひとつ手に取る。

月島君は、無邪気にあーんと口を開けた。
普段のクールさからは想像もつかない、無防備で小動物みたいな仕草。

そんなギャップに、不覚にも“可愛い”なんて思ってしまう。

私は、うるさい心臓の音を誤魔化しながら、月島君の口へゆっくりとタルトを運ぶ。
彼はそれを、満足そうにひと口で頬張った。

「気になる子に食べさせてもらうタルトは別格に美味しいですね」
「だから……!そういうことをさらっと言うのは…!」
「柚葉さんにも食べさせてあげましょうか?」
「なっ!!いっ、いらないわよ!」

鼓動がどんどん早くなる。
月島君に主導権を握られたまま、じゃれ合うことしかできない。

しかし次の瞬間、2人の声が混ざり合う空間は、冷たい声によって切り裂かれた。
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