同期の大井くんは、 長く付き合っている彼女がいるらしい

動揺するな、私

毎朝コンビニで、
大井くんが好きそうなチョコを探す。

おいも味が出てる。
あ、こっちがいいかな。
特濃ミルクってかいてあるじゃん。

大井くんも負けずと、新作を出してくる。

さすが売り上げのいい営業マンらしく、
私の欲しそうなチョコを持ってきた。

忙しい合間に口に入れる甘いチョコ。
大井くんがコンビニで選ぶ様子が頭に浮かぶ。

「よくこんなにいろんなの探してくるよね」
「だろ?」
大井くんが少し得意げに言った。

「彼女さんが詳しいんでしょ」

その時、電話に呼ばれた。
「田沼さーん、5番!」
「はーい」

私は大井くんに軽く手を挙げて、
自席に戻った。

「はい、田沼です。お世話になっています」

私は機嫌よく電話に出たが、
すぐに笑顔が固まる。

血の気が引く音が、
頭の中で響いた。

「はい、承知しました。
週明けに別案をご用意いたします」

そう言って受話器を切り、
しばらく動けなくなってしまった。

どうしよう。
全部ひっくりかえった。

「どうした?」
見上げると大井くんがいる。

「……A社の企画がひっくりかえった」
「締め切りはそのまま?」

私は小さく頷いた。

入社以来、
こんなに追い詰められたのは初めてだった。

「C社がリスケになったから、俺手伝える」
「でも連休かぶるよ? 予定入ってるんじゃ」
「いや、大丈夫」
「彼女さんに悪いよ」
「別れてるから」

私は思わず大井くんを見上げた。

「だから、気にするな」
大井くんが言った。

……別れてる。
そっか。
大井くん、別れてるんだ。

視界がぐらっと揺れた気がした。
脈拍が上がる。

いや、これはトラブルのせいで、
血圧がおかしくなってるだけだ。

動揺なんか、するな、私。
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