同期の大井くんは、 長く付き合っている彼女がいるらしい
同期の大井くんは、シゴデキの営業らしい
連休最終日の夜八時。
二人を残して、他の社員は帰っていた。
「終わった」
私はバタンと机につっぷした。
「なんとかなったな」
隣の席の大井くんも、背もたれに寄りかかる。
私は頭を机に乗せながら、
大井くんの横顔を眺めた。
「……何?」
視線に気づいた大井くんが、
訝しげに尋ねてきた。
「ありがとね、ほんと」
「いいよ、別に」
「でも、連休に仕事ってさ」
私が言うと、
大井くんが「うん」とうなずき
肘を机につく。
「私生活ゼロなんだよね」
私はつぶやいた。
「まあ、そうだね」
「東京に引っ越してきたけど、
私、会社と自宅しかわからない」
たまらず、ため息をつく。
「今日を乗り越えても、
ずっとこれが続くなら」
私は、
大井くんの背後のガラスに反射する、
空っぽのオフィスに目をやった。
「会社、やめよっかな」
思わずつぶやく。
大井くんの椅子がキィと小さくなった。
「……困る」
大井くんが言った。
その声が聞いたことのないような、
切羽詰まったものだったので、
私は軽い口調で、
「なんでよ? チョコ貰えなくなるから?」
と笑ってみせた。
「会社で田沼に会えなくなるから」
私はゆっくりと身体を起こして、
大井くんの顔を見た。
突然、
大井くんは両手で顔を覆った。
「あーもう、なんだよお」
「突然、何よ」
脈拍があがる。
大井くんは
引き出しをガラッと開けた。
「俺、別にチョコ好きじゃない」
「そうなの?」
見ると、引き出しいっぱいにチョコレート。
私に日替わりで一粒ずつくれていた、
その残りの、チョコレートの山だ。
「食べきれないよ、こんな量。
一日一個でも多いくらいだ」
「じゃあ、なんで毎日違う種類をくれた?」
「だって、田沼が喜ぶから」
大井くんは机におでこをゴンッとぶつける。
「今、めっちゃ田沼に営業かけてる」
くるっとこっちを向いた。
大井くんの額が少し赤い。
眉間を少し寄せ、口をへの字に結ぶ。
「鈍感か」
大井くんが言った。
私は少し首を傾げ、
それから椅子に座ったまま、
ゴロゴロとキャスターを転がして、
大井くんの顔を覗き込むように近づいた。
引き出しいっぱいのチョコから、
一つを取り出し、口に入れる。
「これ、キャラメル入りだね」
私が言うと、大井くんと目があった。
「キャラメル味も嫌い?」
私は聞いてみた。
「ううん」
大井くんは小さく笑って首を振ると、
顔を近づける。
「多分、今から好きになる」
そう言った。
二人を残して、他の社員は帰っていた。
「終わった」
私はバタンと机につっぷした。
「なんとかなったな」
隣の席の大井くんも、背もたれに寄りかかる。
私は頭を机に乗せながら、
大井くんの横顔を眺めた。
「……何?」
視線に気づいた大井くんが、
訝しげに尋ねてきた。
「ありがとね、ほんと」
「いいよ、別に」
「でも、連休に仕事ってさ」
私が言うと、
大井くんが「うん」とうなずき
肘を机につく。
「私生活ゼロなんだよね」
私はつぶやいた。
「まあ、そうだね」
「東京に引っ越してきたけど、
私、会社と自宅しかわからない」
たまらず、ため息をつく。
「今日を乗り越えても、
ずっとこれが続くなら」
私は、
大井くんの背後のガラスに反射する、
空っぽのオフィスに目をやった。
「会社、やめよっかな」
思わずつぶやく。
大井くんの椅子がキィと小さくなった。
「……困る」
大井くんが言った。
その声が聞いたことのないような、
切羽詰まったものだったので、
私は軽い口調で、
「なんでよ? チョコ貰えなくなるから?」
と笑ってみせた。
「会社で田沼に会えなくなるから」
私はゆっくりと身体を起こして、
大井くんの顔を見た。
突然、
大井くんは両手で顔を覆った。
「あーもう、なんだよお」
「突然、何よ」
脈拍があがる。
大井くんは
引き出しをガラッと開けた。
「俺、別にチョコ好きじゃない」
「そうなの?」
見ると、引き出しいっぱいにチョコレート。
私に日替わりで一粒ずつくれていた、
その残りの、チョコレートの山だ。
「食べきれないよ、こんな量。
一日一個でも多いくらいだ」
「じゃあ、なんで毎日違う種類をくれた?」
「だって、田沼が喜ぶから」
大井くんは机におでこをゴンッとぶつける。
「今、めっちゃ田沼に営業かけてる」
くるっとこっちを向いた。
大井くんの額が少し赤い。
眉間を少し寄せ、口をへの字に結ぶ。
「鈍感か」
大井くんが言った。
私は少し首を傾げ、
それから椅子に座ったまま、
ゴロゴロとキャスターを転がして、
大井くんの顔を覗き込むように近づいた。
引き出しいっぱいのチョコから、
一つを取り出し、口に入れる。
「これ、キャラメル入りだね」
私が言うと、大井くんと目があった。
「キャラメル味も嫌い?」
私は聞いてみた。
「ううん」
大井くんは小さく笑って首を振ると、
顔を近づける。
「多分、今から好きになる」
そう言った。


