氷の外科医
「……わかった。

がんばって、みる……」



「よし、さすが美雨だ。

麻酔、すぐ準備して!」



裕人のピシッとした指示が飛び、コソコソと会議をしていた佐藤と長谷川がビクッと肩を震わせた。


長谷川が慌てて差し出した滅菌手袋を嵌めると、すぐに消毒にかかる。


小刻みに震える美雨の体が、消毒液の冷たさに大きく反応するのを裕人は見逃さない。



「消毒、冷たいな……。

よし、麻酔いくよ。ここだけ頑張ろう。

長谷川さん、麻酔ください」


さすがの裕人でも、薬剤を注入する際の痛みは避けてあげることはできない。


「はい」


だか、麻酔を受け取る裕人の手に迷いはなかった。



「美雨、頑張るぞ」



スッと針が皮膚を通り、麻酔薬が注入されていく。



「んんぅっ……! 痛いっ、ハァ……!」



「もう終わる……。

よし、よく頑張った!偉いぞ美雨!すぐ麻酔効いてくるからな」



麻酔を打ち終わるや否や、溢れ出る甘さと過保護な愛を隠そうともせず言葉をかける。


「痛いのはもう終わりだ。やっぱり美雨はすごいな。俺の自慢の彼女だ」


「……んもぅ、周りに人がいるのに……恥ずかしい……」


泣きじゃくっていた美雨の頬が、恐怖とは別の理由でぽっと赤くなった。


甘い言葉を吐きながら、裕人は凄まじく正確に、手際よくドレーンチューブを胸腔内に挿入していく。



「よし、入った。
水封につないで……排気確認。

美雨、ゆっくり息を吸ってみてくれ」


チューブからコポコポと空気が抜け、閉塞していた肺が再び膨らみ始める。


美雨は大きく息を吸い込んだ。


「あ……さっきより、ずっと……息が吸える……っ」


「よかった…。ほんとによく頑張ったな」



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