氷の外科医
「……お前たち、何コソコソ話してるんだ」



声を掛けられてビクッとした長谷川と佐藤だったが、すぐにニヤニヤとした笑みを貼り付け、開き直って堂々と前に出てくる。


「あらあら、黒崎先生にまさかこんなに可愛らしい彼女さんがいらっしゃったなんて♡って話してただけですよ」

 
「先生…、僕、超感動しました……!

『俺の自慢の彼女だ』って甘やかしながら診察するテクなんか、医学書のどこを探しても載ってません!」
 

「さ、佐藤……! 」


裕人は顔を真っ赤にして絶句した。


長谷川は腹を抱えて笑いたいのを必死にこらえながら、裕人を小突く。  


「ほらほら先生、いつまでもデレデレしてないで、検査結果確認してきてくださいね。

佐藤先生は早く美雨さんの入院手続きと処置後のレントゲン再撮影のオーダー入れなきゃ」


「えーっ、彼女大好きモードの黒崎先生、もっと見ていたいんですけど〜」 


「佐藤ぉ!」


「ひょえっ…」



逃げるようにステーションへ向かう佐藤と、クスクス笑いながら見守る長谷川。


二人が去った後、裕人はゴホンと咳払いをして耳の赤さを誤魔化そうとしてみたが、もう色々と手遅れなのは明らかだった。



美雨はそんな裕人の横顔を見つめ、握られた手にそっと力を込める。



「裕人、助けてくれてありがとう。やっぱり、私の彼氏は世界一かっこいいね」


「……っ!それ、からかってるだろ……」



照れくさそうに顔を背けながらも、裕人は美雨の手を離そうとしない。


しばらくして、ようやく医師としての顔を取り戻した裕人は、優しく美雨の目を見つめ直した。


「……美雨。ドレーンが入ったからってすぐに安心はできないんだ。肺の傷が塞がって経過が落ち着くまで、しばらく入院することになる」


「入院……このまま……?」


「そうだ。俺が毎日病棟まで診に行くし、ずっと側にいる。だから、焦らずゆっくり治そう」


「うん…」



頷く美雨の手を、裕人は愛おしそうに何度も何度も暖めるように握り続けるのだった。



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