氷の外科医
「あれぇ〜黒崎先生、朝の回診長すぎません?
普通3分で終わるはずなんですけどねぇ〜。
もう15分は経過してるんじゃないですか?」



「さ、佐藤……! お前はまた余計なことを」



「余計なことじゃなくて事実よ、黒崎先生。
さ、点滴変えるわね」



手際よく点滴を交換する長谷川の横で、佐藤がニヤニヤしながらカルテを開く。



動揺して咳払いをする裕人に、美雨は声を立てて笑った。



「ふふっ。

裕人が迷惑かけてますよね、お二人ともすみません」



「美雨さん〜!
もう、黒崎先生ってば美雨さんにはこーんなに優しいのに、僕にはめちゃくちゃ厳しいんですよ〜」


身振り手振りでオーバーに話し、嘘泣きして見せる佐藤。



「本当ねぇ…。

あ、美雨さん!この人ね、職場じゃ『冷徹レーザーメス』なんて呼ばれてて、誰も逆らえない怖〜いお医者様なのよ?
美雨さんの前だとただの過保護な彼氏かもしれないけどね」



「えっ……れ、レーザーメス……!?」



美雨が目を丸くすると、裕人はすぐさま抗議の声をあげる。



「長谷川さん!美雨に妙な噂を吹き込まないでください!」



「噂じゃないわよ。知らなかったの?」



まさか陰でレーザーメスなんてあだ名が流行しているなんて……



絶句する裕人には見向きもせず、長谷川は美雨に言葉をかける。



「美雨さん、もしこの人が病棟で困らせること言ってきたらすぐ私に言いなさいね。味方になってあげるから」



「はい、ありがとうございます」



楽しそうに笑い合う美雨を見て、裕人はため息をつきつつも、どこか嬉しそうに目元を和ませていた。



裕人にとって、美雨が病棟に馴染み、少しずつ笑顔を取り戻していることが何よりの救いだった。



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