氷の外科医
しかし、入院して一週間が経過した頃。



事態は思わぬ方向へと動き始める。





「……エアリークが治まらない」



病室でポコポコと泡立つドレーンバックの水封部を見つめていた裕人の表情が曇る。



通常であれば肺の傷は自然に塞がり、エアリークは治まるはずだった。



だが、美雨の肺の傷は予想以上に深く、自然閉鎖が難しい状態が続いていたのだ。





その日の夕方。


スタッフステーション内で、裕人は佐藤とともにレントゲン画像とCT画像をモニターに映し出し、真剣な眼差しで見つめていた。



「……やっぱり、ブラが破裂した部分の穴が大きくて、自然に塞がるのは厳しそうですね」



「……ああ。
このままドレーンを留置し続けても、感染のリスクが高まるだけだ。

……胸腔鏡下で破裂部位を切除・縫合するしかない」



裕人は深く息を吐き出し、痛む胸を押さえた。



医師として当然冷静な判断を下さなければならないが、怖がりな美雨に“手術”という言葉を突きつける残酷さに心が裂けそうになる。



だが、このまま向き合わない訳にもいかない。



その夜、裕人は一人で美雨の病室を訪れた。



「美雨…、少し、大切な話がある」



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