氷の外科医
「さすが。相変わらず容赦ないわねぇ、黒崎先生は」



滅菌パックの棚卸しをしていたベテラン看護師の長谷川が、感心したように会話に入ってきた。


それに比べて…と話の矛先が佐藤へと向く。



「佐藤先生、無駄口叩いてないで採血の練習でもしなさいよ。今日の昼間も一発で入らなくて患者さんに謝ってたでしょう?」


「うっ…それは言わないでくださいよ〜……。
僕だって黒崎先生みたいに一発でピシッと決めたいとは思っているんですよ?

そうだ…!先生、今度コツ教えてくれません?」


子犬みたいに目をうるうるさせてお願いする佐藤に、裕人はピシャリと言い返す。


「教えるほどのものはない。解剖学的な位置を把握し、迷わず刺すだけだ」


「それが難しいんですけど!?」



佐藤が頭を抱えて唸るのを、裕人は冷ややかに流した。



「ほらほら、さっさと行動に移しなさいな!」


母親が子供に『早く宿題やりなさい!』と怒るような口ぶりで、長谷川が佐藤の尻を叩く。


そんなやり取りを聞きながら、裕人はふとパソコンの画面の端に表示された時刻へと視線を向けた。


絶え間なく動いていた裕人の指先が、少しの間停止する。



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