氷の外科医
「黒崎先生、あと3分で救急車到着します!
20代女性、階段からの転落による右胸部外傷。
意識清明ですが、胸痛と呼吸苦、湿性咳嗽ありです!」


電話を受けた佐藤が、裕人に向けて息を切らせて叫ぶ。


裕人はまだ視線をモニターから逸らさず、いつものように手短に指示を飛ばした。



「酸素と超音波の準備。
長谷川さん、処置室2を空けてドレーンセット出しておいてください」


「了解!
佐藤先生、搬入されたら採血よろしくね!次は一発で決めてよ?」


長谷川がパシッと佐藤の肩を叩いてエールを送った。


「任せてください!よーし、僕の採血テク見せちゃいますよ〜」



ベテラン看護師の長谷川が手際よく受け入れの準備を整える横で、佐藤が意気揚々とスピッツと注射器を準備する。



裕人はようやく椅子から立ち上がり、首から下げた聴診器の位置を整えながら、アイスブルーの瞳に一切の感情を交えず搬入口近くで待機していた。



どんな惨状であろうと、自分の手で命を繋ぐ。


それが職場での彼の絶対的な矜持であり、日常だった。




< 4 / 13 >

この作品をシェア

pagetop