氷の外科医
その様子を見守っていた長谷川が、少し心配そうにこちらへと視線を送ってくる。



「長谷川さん、大丈夫です。僕が診ます」



自分にも、長谷川にも言い聞かせるように、けれどはっきりと言い切った。



「…了解。

頼んだわよ、黒崎先生」


黙って頷くと、深呼吸を挟み、優しく美雨に声をかけた。



「美雨、心配するな。すぐ楽になる」



「……うんっ」



相変わらず浅く、苦しそうな呼吸の間に短く返事をくれる姿に、少しだけ安堵を覚える。



「聴診するよ」



首にかかっていた聴診器を素早く耳に装着し、チェストピースを美雨の胸元へと優しく当てた。


右胸の呼吸音が著しく低下していることを確認した裕人は、すぐさま超音波プローブを手に取り、先端にゼリーを乗せる。



「打撲したところ触るからな。

……少し我慢してくれ」



そっと右胸の側面へプローブを滑らせた瞬間、美雨がびくっと体を強張らせて悲鳴を上げた。



「くっ…!
いたっ……ハァ……痛い……っ!」


「痛いな……。
すぐ終わる、極力痛くないようにするから、
……動かないでいてほしい」


裕人は胸を痛めながらも、手元をミリ単位でコントロールし、圧迫をかけないよう手早く超音波を走らせた。



隣からモニターを覗き込んでいた佐藤が目を見開く。



「右の胸腔線が消失してますね……
呼吸音低下と合わせて、外傷性気胸の疑いです!」


「……ああ、正解だ。レントゲン撮るぞ」



< 8 / 13 >

この作品をシェア

pagetop