氷の外科医
レントゲンの準備を待つ間に、裕人は手際よく美雨の腕から静脈血と動脈血を採取した。


怖がらせないよう神業のような滑らかさで針を刺し、一瞬で採血を終える。



駆けつけた放射線技師によって撮影されたレントゲン画像が、モニターに映し出された。



「外傷性気胸で間違いないな……。
胸腔ドレナージ、準備は?」



画像に素早く目を通し、次の指示を手短に伝える。


「ばっちりよ!」


裕人のスピードに合わせるように、長谷川がテキパキと準備を進めている。



「……美雨、落ち着いて聞いて」



裕人は美雨の視線と同じ高さまで顔を下げ、包み込むような優しさと確信に満ちた声で語りかけた。



「右の胸に管を通して、溜まった空気を外に逃がす処置をする。
そうすればすぐ呼吸が楽になる」



「く、管……? 胸に……? 痛い……?
えっ…、やだ…、怖い……っ」


“管”という生々しいワードと痛みへの恐怖に、美雨の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。


怖がりで痛みに弱い美雨にとって、異物が入る恐怖は計り知れない。



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