ソルが降る日

8 引き寄せた記憶

 地下駐車場の空気は冷たく、現場の喧騒はすでに遠い。

 強く抱きしめすぎた。痛かっただろうか。

 あの時のミリの表情が、いつまでも記憶に纏わりついてくる。レヴエルトのシートに身体を沈めた瞬間、システムが起動しモニターが灯る。

<右上腕部に損傷を確認>

 ルカの声は低く、いつもと変わらない。

 ソルはバックミラー越しに自分の上腕を見ると、裂けたシャツの奥で光が沈黙している。いつまでも肩にあるミリの重さが消えない。

「あの視線は、届いていたか」

<視認確率は高い。正確な数値を提示しますか>

「……不要だ」

<冷却効率が低下しています>
<原因は損壊ではなく――>
「問題ない」
<――>

 走り出そうとした時、運転席側のウィンドウを叩く音がした。

< 18 / 30 >

この作品をシェア

pagetop