ソルが降る日
 そこは住居としては異質な空間だった。

 青白く、硬質で、余分なものを一切置かない部屋。シャツを脱ぐと、上腕の傷もすでに消えていた。

 身の丈ほどのスキャンユニットの前に立つ。その鏡面に映る物体は、人と見分けのつかない身体をして、じっとこちらを見返している。

 ユニットに背を向けて立つと淡い光が静かに走り、全身をなぞるように移動する。触れられる感覚はない。けれど、内側の状態が正確に読み取られていることは、体内のデータ領域で感知する。

 反対側の一角にはプラットフォームが置かれていた。横たわり、身を預ける。ベッドに似ていながらも硬く冷たい。

 部屋のシステムは身体の内部と直結し、全てが自分の指示で動作する。

 壁面に組み込まれたモジュール群は淡い光を脈打たせている。数字も文字も表示されず、状態そのものが揺らぎとして示されていた。

 異常はない。それはすぐに分かる。しかし今日、行動に移るまでの間が、いつもより少し長く、声には人間が気づかないレベルのずれがあった。

 目を閉じる。昼間の事故の記憶が呼び戻されると同時に内部が収縮し、小さな振動を感知した。

 初めての記録にない反応。この感覚を失わずに保持しようとする指示と、直ちに修正しようとする指示が、内部で整理されないまま残り続けた。

 完璧に整えられた白い空間は安全なテリトリー。それなのに今夜は、落ち着かない。

 モジュールの光を見つめた。

 最適解は、すぐには出てこなかった。
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