ソルが降る日
「ミリさん、顔、固まってる」

 少し軽い声で話しかけると、ミリは弾かれたように振り向いた。自分の驚いた顔を見て、短く笑う。

「……あ、すみません」

「いや、わかるよ。ソル、今日は特に、すごいね。はい、糖分補給」

 キラキラとした色鮮やかな包みのフランス土産のスイーツを、ポンと卓の横に置いた。

 ミリがコクリと会釈をすると、肩の力がふっと抜けるのがわかった。

 ソルのように圧倒的な力で場を支配することはできないが、こういう立ち位置なら得意だ。少しだけゆるく結んだネクタイを無意識に整えた。

 ミリの横顔をもう一度見ると、仕事に集中しているはずのその表情は、また遠くへ向いた。

 攻めるべきか? いや、今はまだ踏み込まない。

「終わったら、コーヒーでもどう?」

 軽い調子で言うと、ミリは少しだけ迷うような間を置いてから、笑顔でうなずいた。

「はい、ぜひ」

 それだけで今は十分だ。視線を中央へ戻すと、ソルはすでに次の準備に入っていた。さっきまでの余韻を、まるで存在しなかったかのように切り離して。

 ジフンは思わず自嘲気味に苦笑する。それでもミリの笑顔を曇らせない位置にいたいと思う。

 人間として、正しい距離を保ったまま。
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