ソルが降る日
2 音を拾う人
「ノイズ、ここ拾ってます! セットの裏側のパネル、ラッチの噛み合わせが緩んでるみたいです」
ミリがインカムで伝えると、近くのチーフスタッフが手元のモニターに目をやった。「本当だな、よく気づいた」と舌を巻き、すぐに美術班へ指示を出した。
ソ・ミリ。音響アシスタントとして、この撮影現場に入っている。いつものお決まりのオーバーオール。長袖のTシャツを腕まくりしながら、機材やスタッフが行き交うスタジオの片隅で音のポジションを確認していた。
一歩引いて、全体を見わたす。全ての音を拾い集め、整えれば、現場は回っていく。生まれたときから正確さを超えて、微細な音や感情、予兆のようなものまでも拾ってしまう。
今もまた、遠くで、ひとつだけ異質に美しい音がした。