婚約破棄予定のはずなのですが、悪行もしていない、没落もしていない、嫌われてもいない?どうやって破棄してもらえばいいのでしょうか。
翌日、またおかしな事態に陥っている。
「心配しました。あんな重たいものが落ちてくるなんて。ルシアナ嬢のご無事な姿を見るまで、気が気ではありませんでした」
瞳に涙を浮かべ、心配そうにルシアナを見つめるのは、エリィ·キャロライン。この物語の主人公で、恐らく私がいじめていた令嬢で、おそらく私の敵である。
しかしエリィの瞳には心配の色しか見えない。
(どうなってるの)
混乱するルシアナをよそに、エリィの瞳は揺れている。ルシアナは慌てて弁明した。
「私は大丈夫です。擦り傷くらいしかありません!ご心配おかけしましたね」
手をぶんぶん振って健康であることを示すと、エリィはホッと息を吐いた。
(ど、どうしてエリィがこんなに私の心配をしてるのよ)
状況が分からない。シャンデリアが落ちてから、前世の記憶と混じったからか今までの学園生活の記憶が曖昧だ。
「あの、エリィ嬢?今まで私、貴方にひどかったですよね?」
「え?」
「え?」
混乱して、ものすごくストレートに聞いてしまった。
エリィは困惑しながらも笑顔で言った。
「今まで、ルシアナ嬢には良くしていただいた記憶しかありません」
(何ですって?)
ルシアナは更に混乱した。
(新手の嫌味?いえ、正ヒロインのエリィが嫌味なんて言わないわ)
しかも顔をすこし赤らめながら。
(照れているの?可愛いすぎる)
エリィの照れに心臓を貫かれ、ルシアナは藁にもすがる思いで聞いた。
「で、でも、私のこと嫌いでしょう?」
エリィの大きな目が一瞬見開かれ、きょとんとした後、花が咲いたような笑顔でエリィは答えた。
「大好きですが?」
その後、エリィはルシアナのどこが好きか、学園でルシアナと2人で過ごした楽しい思い出をつらつらと話してくれ、日が暮れる頃に帰って行った。
一応、病み上がりと言うことでエリィと寝室で別れの挨拶を済まし、そのままベッドに仰向けに倒れた。
「どうなっているの···」
悪役であり、恋敵であるはずのルシアナとエリィが、まるで大親友のようではないか。
とはいえ、終始にこにこと自分に好意を向けてくれるエリィを見るとまんざらではない。いやむしろとても嬉しい。
(いや、そうじゃなくて)
「お父様、お父様に会いに行かないと」
フラフラとベッドを抜け出し、父の執務室へ向かった。