嘘つきシンデレラ〜地味男を選んだら、俺様御曹司に溺愛されました〜

 番号を聞き終わるより先に、その男を見た。

 「38」の数字を胸元につけた男性、一宮朔夜は、変わらず存在感が薄いまま、星南は朔夜のもとへ近づいてきた。

「……まさか、成立するとはな」

 小声でそう言うと、朔夜は眼鏡の位置を直す。

「緒方さん。この後の予定は?」

「へ?」

 思いもよらない問いかけに、星南は素っ頓狂な声を返す。

「いい店を知ってる。二人で飲み直さないか」

「……」

 婚活をするつもりはない。

 恋人を作るつもりもない。

 それなのに──まっすぐな誘いを受けて、断ろうとは思えなかった。

 誰かと話して、久しぶりに時間を忘れるくらい楽しかった。だから、もう少しだけこの人と話してみたいと思ったのかもしれない。

 向こうだって、そんな気なんてない。だったら飲みなおすくらい、いいだろう。

「ありがとうございます。ぜひ、ご一緒します」

 そう答えると、朔夜の口元がほんのわずかに緩んだ。

 ほんの一瞬のかすかな微笑み。冴えない眼鏡姿は変わらないはずなのに、なぜかその瞬間だけ、妙に綺麗に見えた。

 不意打ちのような笑顔に、星南の胸がほんの少しだけ高鳴る。

 こうして朔夜に誘われるまま、星南はパーティー会場を後にした。

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