嘘つきシンデレラ〜地味男を選んだら、俺様御曹司に溺愛されました〜
星南は呆然としたまま、目の前の朔夜を見つめるしかなかった。
両親への紹介に、結婚。さらにはウェディングドレス。
まだ自分は何も決められていないのに、朔夜の中では話がずいぶん先まで進んでいるらしい。
「……何呆けてんだよ」
「えっ」
「さっきからずっと固まってるぞ」
「あ、いや……」
言葉を濁しつつ、星南は慌てて視線を落とす。
「えっと……本気で言ってる?その……結婚、とか」
「はあ?当たり前だろ。どういうつもりでこうやって昔なじみの店に連れてきたと思ってんだ」
「……っ」
ぶっきらぼうな物言いのあと、付け加えるように朔夜は続ける。
「別に焦らせるつもりはねえよ」
そこで一度止めて、ぱたんとメニューを軽く閉じた。
「俺はこういうつもりで口説いてるってだけだ。決めるのは星南だから、今すぐどうこうしろとは思ってねえ」
そう言うと、朔夜が手元のドリンクメニューを星南へ預けて立ち上がった。
「悪いが、ちょっと席外す。戻るまでに決めとけよ」
「う、うん……」
朔夜は立ち上がると、そのまま半個室を出ていった。その背中を見送ってから、星南は手元に視線を落とす。
──薄々、そんな気はしていた。
自分を想ってくれる朔夜の気持ちが間違いないことも、自分自身が彼に惹かれていることも分かっている。
それなのに、どうして素直に受け取れないのだろう。