嘘つきシンデレラ〜地味男を選んだら、俺様御曹司に溺愛されました〜

「俺の連れに何の用だ」

 射るような視線を向けられ、源がわずかに怯む。

 声を荒らげているわけでもないのに、その瞳に宿る激しい怒りに、源の表情が強張る。

 凍てつくような朔夜の威圧に動きが止まった、その瞬間。

 星南は咄嗟に立ち上がり、朔夜の腕を取った。

「……そうね。もう住む世界が違うわ」

 そう前置きして、拒むことなく受け入れてくれる朔夜の腕に、星南はさらに身体を寄せる。

「だって私、この人と結婚するから!」

 高らかに宣言すると、朔夜の怒りに飲まれかけていた源が顔色を変えた。

「……は?」

 間の抜けた声を漏らし、それからわずかな動揺を見せる。

「馬鹿言えよ。そんな嘘、誰が信じるんだよ」

 確かに、はったりだ。

 だけど、ついさっき、心は決まった。

 源を前にして、傷の痛みを思い出すことはなかった。それどころか、そんな源を前にして堂々と朔夜を「大事な人」だと言えた。

 その瞬間、ようやく気づいたのだ。

 自分はもう、とっくに過去の恋から抜け出していたことに。

「嘘なんかじゃ──」

 言い返すより先に、朔夜に引き寄せられた。

 そして次の瞬間、唇に柔らかな感触が触れる。

(え……──)

 何が起きたのか、すぐには分からなかった。

 けれど、すぐ目の前にある朔夜の顔と、腰に回された腕の熱が、朔夜にキスをされているのだと否応なく伝えてくる。

 朔夜はゆっくりと唇を離すと、星南を抱き寄せたまま源を見据えた。

「邪魔者がどちらの方か、これで分かるよな?」

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