嘘つきシンデレラ〜地味男を選んだら、俺様御曹司に溺愛されました〜
「えっと、それは……その……」
言葉を濁す星南に、朔夜が声をかける。
「星南」
名前を呼ぶ声はひどく真剣で、それでいて切実だった。
「言うまでもなく、俺は本気だ」
そう言って、朔夜がおもむろにハンドルから手を離す。伸びてきた手が、そっと星南の手に重なった。
「お前が拒まねえなら、このまま連れ帰って既成事実を作らせてもらう」
指を絡められた瞬間、星南の脳裏にさっきの光景が浮かんだ。
突然引き寄せられた身体。すぐ目の前にあった朔夜の顔。──そして、触れた柔らかな唇。
思い出した途端、心臓が大きく跳ねる。
驚きが勝ってしまった、あの不意打ちのキス。それが今になって、高揚感を伴って蘇ってくる。
どくん、どくんと、鼓動が耳の奥まで響くほどに大きくなる。
──拒むなんて、できない。したくない。
誤魔化すための言葉も、逃げるための言い訳も、何ひとつ出てこなかった。ただ、この手だけは離してほしくなくて、星南は絡められた指先に力を込める。
その小さな答えを確かめると、朔夜の手がぴくりと揺れた。
やがて、車が静かに動き出す。
互いに言葉を交わさない車内で、つないだ手だけは離れなかった。