嘘つきシンデレラ〜地味男を選んだら、俺様御曹司に溺愛されました〜

 その男性は店内の端にぽつんと立っていて、誰とも話すことなく一人でグラスをくゆらせている。

 存在感が無いのか、不自然ほどに気配が消えている。

 何より異質だったのは、その容貌だ。

 会場内はいかにも高年収らしい華やかな男性たちが大勢いるのに、その男性は髪はもさもさと伸びて目元にかかり、かろうじて覗く目も、分厚い眼鏡に覆われている。

 着ているスーツも、お世辞にも仕立てがいいとは言えない。

 変な人、というのが最初の印象だった。

 明らかにこの場に興味が無いのが透けて見えていて、早く時間が過ぎるのを待っているように見える。だからなのか、余計に興味が湧いた。

 同じ匂いを感じ取ってしまった──という感覚が、近いかもしれない。

 星南はその思いのまま、足を踏み出していた。

 そのまま近づくと、思っていた以上に地味な男性だった。

「お一人ですか?」

 声をかけると、男がゆっくりと顔を向ける。

「そうですが、何か」

 その不愛想な態度には、「見れば分かるだろ」という考えが透けて見える。

 想像していたよりずっと愛想が無く、話しかけたことを後悔した。だが、ここで引き返すと逃げる場所がなくなる。

「私も一人なんです。よかったら、少しお話しませんか?」

「……俺と?」

「はい」
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