今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
 震える指先を、テーブルの下でぐっと握りしめた。

 藤沢屋は、いったいどうなってしまうのか。

 それに……と、下腹部に手を添える。
 お腹に蓮さんの子がいるとわかったら、高宮家はなんというだろうか。この子の存在が明るみになれば、舞との縁談が破談になった後、蓮さんの次のお相手探しに差し障りがある。

「君たち双子の入れ替わりには、最初から気づいていた」

 ひゅっと息をのむ。
 下を向いたまま、目を見開いた。

「俺のもとに来たのは藤沢唯。妹である君の方だ」

 バッと顔を上げ、一瞬だけ彼と目を合わせて深く頭を下げる。

「申し訳ございませんでした。こんなことだめだと思いながら、流されて従ってしまいました」

 なりふり構ってなどいられない。私の謝罪で許されるわけじゃないとわかっていても、今はこうすることしかできない。

「蓮さんやお義母様の貴重な時間を、無駄にさせてしまいました。謝って許されることではないとわかっています。償いになるのなら、なんでもしますから」

「なんでも?」

「は、はい」

 彼の方を見られないまま、必死に首を縦に振る。

「それなら、顔を上げて俺の話を聞いてほしい。そして、嘘偽りのない言葉で答えてほしい」

「え?」

 それだけでいいのかと戸惑いながら、そっと視線を上げる。目が合った蓮さんは、困ったように苦笑した。

「唯に、謝ってもらいたいわけではないんだ」

 そうして蓮さんは、入れ替わりに気づいた理由を教えてくれた。

「顔合わせの場では左利きだったはずが、マンションへ来た女性は明らかに右利きだ。なんとか取り繕おうとしていたようだが、ぎこちなかった」

 そういう違和感から、彼は藤沢家について調査をしたのだという。

「幼少期は祖母の手で育てられた双子の妹の唯は、優しくて真面目。聡明で努力家でもある。そんな報告を受けてあらためて君を見たとき、やはりふたりは入れ替わっているのだと確信した」
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