今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
 口を開けば謝罪の言葉しか出てこない。
 今はまず蓮さんの話を聞こうと、うなずきながら続きを待つ。

「調査結果を受けて、父は破談にするべきだと主張した。だがその頃にはもう、俺は結婚するなら君しかいないと感じていた」

 お義母様も、私をすっかり気に入っていたとも教えてくれる。

「藤沢屋の今後がどうなるのか。君がずいぶん心配していたのも知っている。だが、大丈夫だ」

 そもそも社内から父や舞に関して不満が噴出しており、今回の件がなくてもあの会社は近い将来立ちいかなくなるような状況だったらしい。

 藤沢屋が高宮の傘下に入るのか、それとも完全に吸収されるのかはまだ不透明なところもある。けれど、間違いなく父は責任を取って社長の座を退くことになるようだ。

 すぐに生活が困窮するわけではないだろうが、今後は舞も遊び暮らすわけにはいかない。甘やかされ続けてきた舞には、受け入れがたい話のはず。逃げ出さずに、自分を見つめ直す機会にしてほしい。

「唯。君が進んで婚約者の入れ替わりに加担したわけではないと、わかっている」

「ですが、結局は蓮さんたちを騙していました」

「高宮側は最初から君の正体を知っていたのだから、騙されていたつもりはない」

 蓮さんは害を受けた側だというのに、おかしな言い分だ。そんな解釈は認められないと、首を横に振り続ける。

「逆に聞くが、唯は俺が好きだと言ってくれたのは嘘だったのか?」

 怒っているわけではない。私を試すように蓮さんが言う。

「それ、は……」

 あの夜、蓮さんは『考えすぎかな。どうにも、君がどこかへ消えてしまう気がしてならない』と口にしていた。

 婚約者の入れ替わりについて、舞が花嫁修業と聞いて結婚を拒否したからか。それとも面倒事だけ私に押しつけて、最終的に自分が結婚するつもりでいたのか。
 おそらく蓮さんは、後者だとどこかのタイミングで確信したのだろう。

 それでも彼は、私を愛していると言って大切にしてくれた。
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