今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
「唯、舞ちゃんも反省しているの。許してあげて頂戴」

 対面早々に、母が切りだす。その隣で、父は黙ったまま渋い顔をしていた。

「あなたの方から、高宮さんにとりなし――」

「ふたりとも、これまで舞が私にしてきたことはもう聞いていますね?」

 その続きを蓮さんの前で言わせるわけにはいかず、母を遮って尋ねる。

「ああ」

 答えたのは父だけだ。

 レッスンを台無しにしたのは舞で、彼女は自分の失敗をすべて私に押しつけていた。周囲に平気で嘘をつき、すべて自分の都合のいいように仕向けてきた舞。

 あらためて彼女のしてきたことを伝えている間、母は神妙な顔をしていた。

「その上で、まだ舞を許せというの?」

「……だって、舞ちゃんがかわいそうじゃない」

 ここまで訴えてもなお呆れたことを言う母に、話をするだけ無駄だったと虚しくなる。

 けれど心の隅にわずかに残る諦めきれない家族への期待が、私の口をさらに開かせた。

「それじゃあ、私のことはどうなの? 本当のことを知って、少しはかわいそうだと思ってくれた?」

 冷静でいたいのに、感情が昂って口調がきつくなる。

 母が口をつぐむ。その姿は、私のことなど考えもしなかったと突きつけられたもう同然だった。

「私はただ、もっと話を聞いてほしかった。私が悪いと決めつけて、一方的に責める前に」

 ここで涙を見せるなんて悔しくて、必死で耐える。そんな私の肩を、隣から蓮さんが抱き寄せてくれた。

「これまで通り、私にはなにも期待をしないでください」

 母が、悲愴な顔を私に向ける。まるで自分は被害者だと言っているようで、嫌な気持ちになった。

「今日は、それだけを伝えたいと思っていました」

「そんな、唯。私たちは家族じゃない」

「あなたたちが私も含めて家族だと捉えているなんて、子どもの頃から一度も感じたことはありません。これ以上、ふたりを嫌いにさせないで」

 ぐっと唇をかむ。
 私がここまで言っても、母はまだなにかを訴えようとする。それを止めたのは父だった。
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