今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~

エピローグ

 突然聞こえてきた赤ちゃんの泣き声に、ハッとして瞼を開ける。
 どうやらリビングで蓮さんとゆっくりしていたところ、眠気に襲われてうたた寝をしていたらしい。

 立ち上がりかけたところで、隣にいた蓮さんに押し戻される。

「俺が見るよ。唯はもう少し休んでいて」

「ありがとう」

 予定より少し早い三月の中旬に生まれた颯(そう)は、きりっとした目もとが蓮さんにそっくりな男の子だ。
 生後三カ月のため、まだまだ夜の授乳が続いており日々寝不足になっている。

「ほら、颯。どうした?」

 リビングに一角に寝かされていた颯が、顔を真っ赤にして泣いている。
 蓮さんは焦ることなく抱き上げ、目を細めて息子の額に口づけた。

 相変わらず彼は多忙の身だが、家族で過ごす時間をなによりも大切にしてくれる。颯のお世話もひと通りこなせてしまい、本当に頼もしい存在だ。

「綺麗になったぞ」

 どうやら、おむつが汚れていたらしい。まだぐすっと鼻を鳴らしている颯だが、再び蓮さんに抱き上げられて早くも眠りかけている。

 颯を抱いたまま、蓮さんがこちらへ戻ってくる。
 隣に座った彼の腕の中を覗き込むと、颯は口を小さく開けたまま再び眠りについていた。

 その柔らかな頬を、蓮さんがそっとなでる。

「かわいいな」

 出会った頃は、他人を寄せ付けない冷たい空気を纏っていた蓮さん。その彼が、今ではすっかり優しい父親の顔をしている。

 私も同じように、息子の頬をなでた。

「颯、私たちの所に来てくれてありがとう」

 顔を上げて、蓮さんに笑みを向ける。

「その前に、唯。俺の所に来てくれたのが君で、本当によかった」

 そう言った彼は、私に優しく口づけてくれた。




END
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