今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
 翌朝になって目が覚めた私は、見慣れない天井に困惑していた。

 ここはどこだと、慌てて体を起こす。
 何度か瞬きをして、そうだと思い出した。

「今日から花嫁修業だった」

 ベッドから出て、身支度を整える。
 リビングがシックな雰囲気だったのに対し、ドレッサーやちょっとした机などオフホワイトでまとめられたこの部屋は明るい印象を受ける。

 蓮さんの印象とはかけ離れていることから想像するに、婚約者になる女性のためにそろえたのだろう。
 私を突き放すような態度を見せた彼だが、この部屋を見れば反発心なんか生まれるはずがない。彼は結婚が不本意であったとしても、迎え入れる最低限の準備はしている。

 着替えを済ませて、そろりと部屋を出る。
 昨夜は遅くまで寝つけないでいたが、その間に蓮さんが帰宅した様子はなかった。彼にとっては迷惑かもしれないが、食事はどうしたのか、ちゃんと休めているのかと気になってしまう。

 カタリと物音が聞こえてハッとする。
 慌てて音がした玄関へ向かうと、靴を履き終えた蓮さんがドアに手をかけていた。
 まだ六時前だというのに、彼はもう出勤するようだ。

「いってらっしゃい」

「……ああ」

 一瞬怪訝な顔をした彼だったか、ひと言返して颯爽と出ていった。

 かろうじて見送りができたことはよかった。
 無視をされなかったことにほっとしながら、キッチンへ向かう。
 蓮さんが使った形跡はなく、やはり朝はなにも食べていないようだ。余計なお世話かもしれないが、体調は大丈夫なのか心配になる。
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