今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
「今日のところはまず、スケジュールの確認と使用する部屋の案内をするわ」
「はい。よろしくお願いします」
レッスンは月曜から金曜までびっしり入っている。着付けや茶華道くらいは想像していたが、お義母様による書道の時間もあった。さらに英会話や手話など、予想外のものまである。
「社長の妻ともなれば、様々な場に出ることになります。それに、蓮はいずれグループを率いていく立場になります。おのずと、その配偶者にも注目が集まるでしょう」
淡々と語られるが、お義母様もそういう場をいくつも経験してきたはず。そんなすごい人からも学べると思うと、胸が震えた。
「海外からの客人をもてなす機会も出てきます。蓮がいなくてもあなたがメインとなって動けるように、必要な知識を今からしっかりと身につけてもらいます」
「精いっぱい、がんばらせていただきます。ご指導、よろしくお願いします」
説明を終えると、お義母様が自ら部屋を案内してくれた。
「着付けと華道は、こちらのお部屋を使います。それから――」
家の中は、外から見る以上に広い。迷子になってしまいそうだと、必死について行く。
洋風の部屋もあれば、和室もある。もしかしたら招く客人に合わせて案内する部屋が違うのかもしれない。
高宮家に嫁いだら、お義母様が担っている役割をいずれは引き継ぐ立場になる。
そのために求められる知識と技術を、舞がすべて身につけるとは思えない。
結婚後にそんなことが露呈すれば、高宮家に大きな迷惑をかけてしまう。申し訳ないと思うだけではすまない事態を想像して、すべてを打ち明けたくなる。が、その勇気すら、今の私にはなかった。
嫁を迎えるために、高宮家はこうして準備をしてくれているのだ。舞には、なんとか誠実に応えてほしいと切に願う。
「こんなところかしら。わからないことがあれば、私や使用人に聞いてもらえばかまわないわ」
「ありがとうございます」
お義母様の温度を感じさせない口調は変わらないものの、私に対する気遣いや配慮を感じる。
舞は彼女の雰囲気をずいぶん悪く捉えていたようだが、決して意地悪な人には思えない。
至らない私に不満があるだろうに、それで態度を変得るようなことはなかった。
お義母様の凛とした雰囲気が、年齢は違うものの大好きだった祖母と重なる。
この人についていきたい。そんな憧れを胸に、蓮さんの実家を後にした。
「はい。よろしくお願いします」
レッスンは月曜から金曜までびっしり入っている。着付けや茶華道くらいは想像していたが、お義母様による書道の時間もあった。さらに英会話や手話など、予想外のものまである。
「社長の妻ともなれば、様々な場に出ることになります。それに、蓮はいずれグループを率いていく立場になります。おのずと、その配偶者にも注目が集まるでしょう」
淡々と語られるが、お義母様もそういう場をいくつも経験してきたはず。そんなすごい人からも学べると思うと、胸が震えた。
「海外からの客人をもてなす機会も出てきます。蓮がいなくてもあなたがメインとなって動けるように、必要な知識を今からしっかりと身につけてもらいます」
「精いっぱい、がんばらせていただきます。ご指導、よろしくお願いします」
説明を終えると、お義母様が自ら部屋を案内してくれた。
「着付けと華道は、こちらのお部屋を使います。それから――」
家の中は、外から見る以上に広い。迷子になってしまいそうだと、必死について行く。
洋風の部屋もあれば、和室もある。もしかしたら招く客人に合わせて案内する部屋が違うのかもしれない。
高宮家に嫁いだら、お義母様が担っている役割をいずれは引き継ぐ立場になる。
そのために求められる知識と技術を、舞がすべて身につけるとは思えない。
結婚後にそんなことが露呈すれば、高宮家に大きな迷惑をかけてしまう。申し訳ないと思うだけではすまない事態を想像して、すべてを打ち明けたくなる。が、その勇気すら、今の私にはなかった。
嫁を迎えるために、高宮家はこうして準備をしてくれているのだ。舞には、なんとか誠実に応えてほしいと切に願う。
「こんなところかしら。わからないことがあれば、私や使用人に聞いてもらえばかまわないわ」
「ありがとうございます」
お義母様の温度を感じさせない口調は変わらないものの、私に対する気遣いや配慮を感じる。
舞は彼女の雰囲気をずいぶん悪く捉えていたようだが、決して意地悪な人には思えない。
至らない私に不満があるだろうに、それで態度を変得るようなことはなかった。
お義母様の凛とした雰囲気が、年齢は違うものの大好きだった祖母と重なる。
この人についていきたい。そんな憧れを胸に、蓮さんの実家を後にした。