今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
 最後に、着物の畳み方を教えてもらう。

「今日はここまでにしましょう」

「ありがとうございました」

 お義母様が、講師の先生を伴って退室する。

 私はその間、言われた通り部屋を手早く片付けていく。
 それが終わると、ノートを取り出した。

 記憶にあるうちに、教えてもらったことを書き留めておく。同じことを繰り返し聞かないよう、できる限り覚えてしまいたい。
 そう必死になるのは、高宮家を騙しているという罪悪感のせいもある。

 本当のことを言うべきだと頭には常にあるが、花嫁修業はもう始まっている。打ち明ける機会はこれまでにあったはずなのに、弱い私はなにも言わないままここまできてしまった。

 話は私ひとりの責任で済ませられる段階じゃない。これ以上は高宮家を欺くことのないよう、せめて今だけでも誠実でいたい。

 焦燥感に、ペンをきつく握り締める。暗い思考を振り払おうと、目の前のことに没頭した。







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