今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
 蓮さんのマンションで暮らすようになって一週間が経ち、初めての週末を迎えた。

 これまでの間、さりげなさを装って彼を見送ったり出迎えたりしてきた。あくまでついでだという私の雰囲気に、蓮さんはなにも言いはしなかった。迷惑だ、やめてくれと言われていたら、もちろん続ける気はない。

 受け入れてもらえたとは到底言えないものの、少なくとも拒絶はされていない。私にとっては、それだけでうれしかった。

 今日はレッスンの予定が入っておらず、完全にフリーだ。
 本当なら、部屋で習ったことのおさらいをしておきたいところ。

 ただ〝舞らしさ〟を考えたら、こもってばかりではいられない。休日の彼女が在宅しているなど稀で、いつもどこかへ出かけていた。
 結婚した後も、彼女なら好きなように過ごすに違いない。それなら、今のうちにそういう人だと蓮さんにわかってもらっておいた方がいい。

 行く当てはないけれど、ひとまず支度を始める。
 服を選ぼうとクローゼットを開けたところで、思わずため息を吐いた。

 持ち込んだのは、冬物の服ばかり。それでもミニスカートや体にぴったりフィットする薄い生地のトップスが多い。ジャケットも丈が短くて、首回りに豪華なファーがついている。

 蓮さんの実家に行くときは、さすがに舞の服は着ていなかったけれど……と、重苦しい気持ちでそれらを見つめた。

「私では着こなせそうにない」

 それに、この服に合わせたメイクなんて絶対にできない。染めたことのない黒髪は、どうアレンジしていいのやら。

 とりあえずミニスカートは無理だと、自分のロングスカートを手にする。オレンジ系のチェック柄のもので、履き慣れたものだ。
 普段ならブラウスを合わせるところだが、舞の服の中で一番飾り気のない、クリーム色のトップスを手に取る。体のラインを強調するようなデザインは苦手だが、仕方がない。やたらとゴージャスなファーのついたジャケットを着たら、そこはごまかせるだろう。

 いつもよりも少し濃くメイクをして、背中の中ほどまである黒髪はルーズなまとめ髪にした。
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