今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
 朝になって目が覚めると、すでに蓮さんが動き出している音が聞こえてきた。彼の邪魔にならないように私も起き出し、見送りを済ませた後に義実家へ向かう。

「舞さん、ちょっといいかしら」

 手話の講義を終えたところで、お義母さんに呼び止められてお茶に誘われた。もちろん断るはずがなく、彼女の後に続く。
 リビングに通され、向かい合わせに座る。

「ずいぶん、熱心に取り組んでいるようですね」

 なにを言われるのかとそわそわしていたが、好意的な言葉にほっとする。

「どのレッスンも、すごく楽しくて」

 思いが強すぎて、つい前のめりになる。

「学ぶ機会をくださり、ありがとうございます」

 怪訝な顔をしたお義母様だが、まだ手に持ったままになっていたノートを見て僅かに表情を緩めた。習ったことをまとめているのだと、以前お義母様に聞かれて見せたことがある。

「先生方も、よくがんばっていると褒めていましたよ。のみ込みも速いと」

「そう言っていただけて、うれしいです」

 表情からは感情がわかりにくいお義母様だが、ほんのわずかに口もとを緩めている。
 まだまだ学ぶことだらけだけれども、少しずつ認められて俄然やる気になっていた。

 義実家を後にして、マンションに帰宅する。
 作った夕食をひとりで食べた後は、いつも通り和室で復習を始めた。

 着付けはマスタ―できたけれども、帯の結びでいつも手こずってしまう。先日、新しい結び方を教えてもらったが、まだ上手くできないでいた。回数をこなすしかなく、マンションでもよく練習をしている。

 姿見の前に立ち、帯を手に奮闘する。
 肩にかけて、背面も気にしてと、試行錯誤していた。
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