今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
「これ以上の見合いは、俺も面倒だった」
彼の言葉に、チクリと胸の奥が痛む。
ちょっと認められたくらいで、まるで自分を求めてもらえたように浮かれていた。
そんなわけがないのにと、密かに嘆息する。
「私が結婚相手で、蓮さんはいいんですか……って、不躾にすみません」
「高宮家の害にならないのなら、俺は誰でもかまわない」
蓮さんにとって、私でないといけない絶対的な理由はない。
わかっていたはずなのに、少し褒められたくらいで自惚れた自分が恥ずかしくなる。
これまでにも蓮さんは、何人かの女性とお見合いをしていたらしい。それはお義母様から聞いている。花嫁修業を初めてしばらくした頃に、女性側から辞退したのだとも。
多忙で時間の惜しむ彼にとって、私の存在は都合がいいのだろう。
それが事実でも、彼との関係を少しでもいいものにしたいという気持ちは変わらない。会社同士のことと関係なく、自然と多忙な彼の力になりたいと思えた。
「ごちそうさま」
いつの間にコーヒーを飲み終えた蓮さんが立ち上がる。
「あっ、片づけておくので」
慌てて言い添えると、小さくうなずき返される。
「あの」
立ち去りかけた蓮さんだったが、足を止めて振り向いた。
いつも通り感情の読めない、というか視線が鋭いから冷たいとすら感じられる彼に怯みそうになる。
ここで引きたくなくて、手を握りしめながら慎重に口を開いた。
「これからは、蓮さんの朝食も用意をしていいですか?」
じっと見つめ返されて、小さく身じろぐ。
「ご、ご迷惑でしたら――」
「そうだな。君とはいずれ夫婦となるんだ。少しは交流もするべきだろう」
「それじゃあ」
拒否されなかったことに、頬が勝手に緩んでしまう。
「必要のない日は、事前に伝えるようにする」
「はい!」
やった。任せてもらえる。
つい前のめりに返すと、蓮さんはわずかに目を見開き、それから口もとを少しだけ緩めた。
普段の凛々しい表情も見惚れてしまうが、初めて目にした柔らかな雰囲気も素敵だ。
彼のこんな表情をもっと見たい。そう思いながら、タブレットを手にダイニングを後にする蓮さんの背中を見送った。
彼の言葉に、チクリと胸の奥が痛む。
ちょっと認められたくらいで、まるで自分を求めてもらえたように浮かれていた。
そんなわけがないのにと、密かに嘆息する。
「私が結婚相手で、蓮さんはいいんですか……って、不躾にすみません」
「高宮家の害にならないのなら、俺は誰でもかまわない」
蓮さんにとって、私でないといけない絶対的な理由はない。
わかっていたはずなのに、少し褒められたくらいで自惚れた自分が恥ずかしくなる。
これまでにも蓮さんは、何人かの女性とお見合いをしていたらしい。それはお義母様から聞いている。花嫁修業を初めてしばらくした頃に、女性側から辞退したのだとも。
多忙で時間の惜しむ彼にとって、私の存在は都合がいいのだろう。
それが事実でも、彼との関係を少しでもいいものにしたいという気持ちは変わらない。会社同士のことと関係なく、自然と多忙な彼の力になりたいと思えた。
「ごちそうさま」
いつの間にコーヒーを飲み終えた蓮さんが立ち上がる。
「あっ、片づけておくので」
慌てて言い添えると、小さくうなずき返される。
「あの」
立ち去りかけた蓮さんだったが、足を止めて振り向いた。
いつも通り感情の読めない、というか視線が鋭いから冷たいとすら感じられる彼に怯みそうになる。
ここで引きたくなくて、手を握りしめながら慎重に口を開いた。
「これからは、蓮さんの朝食も用意をしていいですか?」
じっと見つめ返されて、小さく身じろぐ。
「ご、ご迷惑でしたら――」
「そうだな。君とはいずれ夫婦となるんだ。少しは交流もするべきだろう」
「それじゃあ」
拒否されなかったことに、頬が勝手に緩んでしまう。
「必要のない日は、事前に伝えるようにする」
「はい!」
やった。任せてもらえる。
つい前のめりに返すと、蓮さんはわずかに目を見開き、それから口もとを少しだけ緩めた。
普段の凛々しい表情も見惚れてしまうが、初めて目にした柔らかな雰囲気も素敵だ。
彼のこんな表情をもっと見たい。そう思いながら、タブレットを手にダイニングを後にする蓮さんの背中を見送った。