今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
「理解、しています」

「決められた予算内の金は、自由に使ってかまわない」

 毎月、生活に必要な十分な金額渡す約束になっている。多少の贅沢もできる金額だ。その範囲内であれば、好きにすればいい。

「だが――」

 取り返しのつかないことをされないよう、釘をさすことは忘れない。

「それ以外は認めない。高宮家に害をなすような言動が見られたら、この関係は即時解消する」

 甘い顔を見せれば、相手からの要求は吊り上がっていくだけ。まだ婚約者でしかない立場で、あれこれ好き勝手されてはたまらない。

「わかりました」

 反発することなくうなずく彼女に、ひそかに安堵する。

 誰が妻になろうとも、必要以上に関わるつもりはない。結婚して子どもができたときには、父親として義務を果たす覚悟はある。が、理想通りの団らん風景など、今の俺には想像がつかなかった。

 どういうつもりで双子の妹が俺のもとに来たのかは知らないが、母にはその可能性を伝えておいた。

『藤沢さんは、なにを考えているのかしら』

 スマートフォン越しに、母の困惑する様子が伝わってくる。

 藤沢屋の業績が悪化し続けていることは把握している。あちらとしては、高宮家からの援助や仕事上での優遇を見込んで縁談に応じたのだろう。

 そして、こちらとしては呉服屋が廃業に追い込まれないよう、今から囲い込んでおくことが目的だ。最終的には、傘下に組み込んでしまいたい。

 ありえないことを通してきた藤沢社長の態度をから考えるに、高宮が藤沢屋の実権を握ってしまった方がいいのかもしれない。婚約者の入れ替わりを容認するような社長では、会社を正しく導いていく能力があるとは到底思えなかった。

 動き始めたばかりの新しい事業を見直しは必須。そう考えながら、俺のもとに来た女性を思い浮かべる。

「顔合わせに来た女性よりも常識のある感じだったので、このまま受け入れては?」

 そう提案すると、母は実際に会ってから決めるとした。




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