今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
『まったく違う子が来たわ』
そうして迎えた花嫁修業の初日。母から電話があり、応答したひと言目がこれだ。
『謙虚で熱心で、常識的なお嬢さんね。真っすぐで、擦れていなくて。もうしばらく様子を見るけれど、いい子だわ』
いつもは冷静沈着な母の、珍しく興奮した様子に驚いた。厳しいあの人が、初対面の他人をこんなふうに褒めるのも珍しい。
「早計ですよ。本心を隠しているだけかもしれない」
俺だって、彼女が偽っているようには見えなかった。
『あれだけ上手く隠せるなら、すごいじゃない。それよりも、最後までついてこられるといいのだけれど……』
花嫁修業と言えば古めかしいしきたりのようだが、高宮家に嫁いで来るからには必要なもの。要人のもてなしをする機会も多く、そこでの振る舞いが商談の結果を左右する。
こちらから求めるものはどうしても多くなるが、それができなければ迎え入れられない。
必要なのは、知識と常識を兼ね備えた俺の邪魔にならない女性。そのためにある程度自由に使える金を渡しているし、なにより、会社絡みで優遇をしている。
とはいえ体調を崩されても困るから、無理をしろとまでは言わない。
が、彼女はどうやら生真面目すぎるきらいがある。
俺が把握している限り、夜遅くまで復習に時間を費やし朝も早い。スタートからこれでは途中で息切れしそうで、つい注意をする。
しかし、彼女には意外と強情なところもあるようだ。俺に言われても、そのリズムを崩すつもりはないらしい。こちらも放っておいている手前、さらに強くは出づらかった。
それにしても、さんざん放置しているのだから文句のひとつも言われそうだが、そんな様子はまったくない。
逆に、『お疲れさまです』とねぎらわれてしまい、少々決まりが悪い。しかも彼女は、柔らかな笑みを浮かべてそう言うのだ。嫌味かと思いかけたが、相手からそんな悪感情はまったく伝わってこなかった。
業績が悪化している実家から、上手くやるように言われているのか。
そうであったとしても、結婚後も控えめなままでいてくれるならかまわなかった。
そうして迎えた花嫁修業の初日。母から電話があり、応答したひと言目がこれだ。
『謙虚で熱心で、常識的なお嬢さんね。真っすぐで、擦れていなくて。もうしばらく様子を見るけれど、いい子だわ』
いつもは冷静沈着な母の、珍しく興奮した様子に驚いた。厳しいあの人が、初対面の他人をこんなふうに褒めるのも珍しい。
「早計ですよ。本心を隠しているだけかもしれない」
俺だって、彼女が偽っているようには見えなかった。
『あれだけ上手く隠せるなら、すごいじゃない。それよりも、最後までついてこられるといいのだけれど……』
花嫁修業と言えば古めかしいしきたりのようだが、高宮家に嫁いで来るからには必要なもの。要人のもてなしをする機会も多く、そこでの振る舞いが商談の結果を左右する。
こちらから求めるものはどうしても多くなるが、それができなければ迎え入れられない。
必要なのは、知識と常識を兼ね備えた俺の邪魔にならない女性。そのためにある程度自由に使える金を渡しているし、なにより、会社絡みで優遇をしている。
とはいえ体調を崩されても困るから、無理をしろとまでは言わない。
が、彼女はどうやら生真面目すぎるきらいがある。
俺が把握している限り、夜遅くまで復習に時間を費やし朝も早い。スタートからこれでは途中で息切れしそうで、つい注意をする。
しかし、彼女には意外と強情なところもあるようだ。俺に言われても、そのリズムを崩すつもりはないらしい。こちらも放っておいている手前、さらに強くは出づらかった。
それにしても、さんざん放置しているのだから文句のひとつも言われそうだが、そんな様子はまったくない。
逆に、『お疲れさまです』とねぎらわれてしまい、少々決まりが悪い。しかも彼女は、柔らかな笑みを浮かべてそう言うのだ。嫌味かと思いかけたが、相手からそんな悪感情はまったく伝わってこなかった。
業績が悪化している実家から、上手くやるように言われているのか。
そうであったとしても、結婚後も控えめなままでいてくれるならかまわなかった。