今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
しばらくして上がってきた報告書は、双子が入れ替わっていると予想した通りのものだった。
俺のところにやって来た婚約者の顔を浮かべながら、数枚にわたる調査結果にじっくりと目を通していく。
彼女の名前は藤沢唯。
幼少期は祖母に育てられ、両親と暮らしていた舞とは一卵性の双子の姉妹だ。
彼女たちの外見はそっくりだが、内面はまったく違うらしい。
唯の性格は真面目で控えめ。勤め先では仕事が正確で丁寧だと評判がよく、悪い話はまったく出ていない。しいて言えば、突然の退職を残念がる人がいたくらいか。
まずそこに引っ掛かりを覚えながら、さらに先を読み進める。
彼女の祖母が生きていた頃に、藤沢家に務めていた使用人からの証言もある。唯の養育が祖母に任せられたのは、双子の育児に手が回らなかった両親からの頼みによるもの。祖母が亡くなる五歳くらいまで、唯は離れで暮らしていたという。その間、両親や舞との交流は多くはなかった。
礼儀を重んじる祖母の影響を大きく受けた唯は、謙虚で誰に対しても丁寧に接する。幼いなりに高齢の祖母を思いやり、手を焼くような我がままを言うことはまったくない。祖母をよく手伝い、慕っていたようだ。
これらの評価は、俺の所に来た女性そのままのように思う。
それに対して、舞は両親にずいぶん甘やかされていた。
ほしいものは望むだけなんでも与えられ、気に食わないと癇癪を起す。使用人に八つ当たりすることも多く、職を辞す者を出すほど。典型的な我がまま娘だ。
唯と一緒に育てられるようになってからの舞は、失敗をすればすべて妹のやったことだと周囲に吹聴していた。
当時、着付けの講師として数回藤沢家に通っていた人物にも話を聞けている。それによると、レッスンのたびに唯が暴れて逃げ出してしまうため、わずか数回で講師を辞退したという。
十中八九、暴れたのは舞だろう。彼女は同じ外見であることを利用して、唯がやったと訴えていた。
両親は、自分たちの手で育ててきた舞を贔屓しがち。彼女の言い分を、そのまま鵜呑みにする傾向が強い。
その繰り返しですっかり傷ついていただろう唯は、家族に反論をしなくなっていく。控えめだと言われていた唯の評価は、気分屋で関わりづらい子だと変わっている。
実際のところ唯は、両親や舞に対してなにも期待しなくなっていたのだろう。
そのあたりの事情に気づいていた使用人は、唯のことを『気の毒で仕方がなかった』と涙交じりに吐露したという。
俺のところにやって来た婚約者の顔を浮かべながら、数枚にわたる調査結果にじっくりと目を通していく。
彼女の名前は藤沢唯。
幼少期は祖母に育てられ、両親と暮らしていた舞とは一卵性の双子の姉妹だ。
彼女たちの外見はそっくりだが、内面はまったく違うらしい。
唯の性格は真面目で控えめ。勤め先では仕事が正確で丁寧だと評判がよく、悪い話はまったく出ていない。しいて言えば、突然の退職を残念がる人がいたくらいか。
まずそこに引っ掛かりを覚えながら、さらに先を読み進める。
彼女の祖母が生きていた頃に、藤沢家に務めていた使用人からの証言もある。唯の養育が祖母に任せられたのは、双子の育児に手が回らなかった両親からの頼みによるもの。祖母が亡くなる五歳くらいまで、唯は離れで暮らしていたという。その間、両親や舞との交流は多くはなかった。
礼儀を重んじる祖母の影響を大きく受けた唯は、謙虚で誰に対しても丁寧に接する。幼いなりに高齢の祖母を思いやり、手を焼くような我がままを言うことはまったくない。祖母をよく手伝い、慕っていたようだ。
これらの評価は、俺の所に来た女性そのままのように思う。
それに対して、舞は両親にずいぶん甘やかされていた。
ほしいものは望むだけなんでも与えられ、気に食わないと癇癪を起す。使用人に八つ当たりすることも多く、職を辞す者を出すほど。典型的な我がまま娘だ。
唯と一緒に育てられるようになってからの舞は、失敗をすればすべて妹のやったことだと周囲に吹聴していた。
当時、着付けの講師として数回藤沢家に通っていた人物にも話を聞けている。それによると、レッスンのたびに唯が暴れて逃げ出してしまうため、わずか数回で講師を辞退したという。
十中八九、暴れたのは舞だろう。彼女は同じ外見であることを利用して、唯がやったと訴えていた。
両親は、自分たちの手で育ててきた舞を贔屓しがち。彼女の言い分を、そのまま鵜呑みにする傾向が強い。
その繰り返しですっかり傷ついていただろう唯は、家族に反論をしなくなっていく。控えめだと言われていた唯の評価は、気分屋で関わりづらい子だと変わっている。
実際のところ唯は、両親や舞に対してなにも期待しなくなっていたのだろう。
そのあたりの事情に気づいていた使用人は、唯のことを『気の毒で仕方がなかった』と涙交じりに吐露したという。