今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
「こんなところで寝ていると、体を痛めるぞ」

 肩を揺すられ、意識が浮上する。
 重い瞼をなんとか持ち上げ、ゆっくりと顔を上げた。

「蓮さん……?」

「大丈夫か?」

 なにをしていたか、瞬時に思い出せない。

「あれ? 私……」

 テーブルの上を見て、ハッとする。
 勉強をしながら寝てしまっていたようだ。

 慌てて立ち上がろうとしたところ、ぐらりと体揺れ倒れ込みそうになる。そこを、すかさず蓮さんが支えてくれた。

「すみません」

 密着具合に恥ずかしさはあるけれど、寝起きのせいかぼんやりして反応が遅れる。

「熱があるんじゃないか?」

 羞恥心で顔が赤くなっているだけだと首を横に振ったところ、頭の中がぐわんぐわんと揺れて気分が悪くなった。

 怪訝な顔をした蓮さんが、不意に私の額に触れてくる。苦しさと恥ずかしさに耐えかねて、瞼をぎゅっと閉じた。

「ちょっと待ってろ」

 ソファーに横たえられ、目だけで彼を負う。

 そうだ、夕飯の準備をしないと。
 そう思ったが、体がいうことを聞いてくれない。蓮さんにも「おとなしくしてろ」と、手で制されてしまった。

 促されるまま検温して、結果を見た途端に思わず隠しそうになる。でも、ずいっと顔を近づけた蓮さんに、体温計を奪われてしまった。

「けっこう高熱だな」

 蓮さんが、眉間にしわを寄せる。

「だ、大丈夫、ですから」

「そんなわけがないだろ。君は動きすぎだ。頼むから、おとなしく休んでいてくれ」

 蓮さんにそんなふうに言われたら、従わないわけにはいかない。

 あまり熱を出さない体質なのに、どうしてこのタイミングでと恨みたくなる。無理をしているつもりなんて、まったくなかったのに。
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