今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
「ほら、起きられるか」

 すぐにうたた寝をしていたようで、蓮さんに揺り起こされる。支えられながら体を起こしたが、上半身はゆらゆら揺れて姿勢を保つのも苦労する。

「少しでも食べたほうがいい」

 テーブルには、いつの間にかおじやが用意されていた。どうやら私が作っておいたスープを使って、蓮さんが即席で用意してくれたらしい。

 促されて匙を持つ。

「だ、大丈夫ですから」

 まだ自身は食事をしていない蓮さんに、迷惑をかけてしまっている。

「どこがだ。体調が悪いときくらい、素直に甘えておけ」

 頭を優しくなでられて、ふっと肩の力が抜けた。
 なにも考えられそうになくて、とりあえず食べることに専念する。

 半量くらい食べられただろうか。申し訳ないが、そこでもう限界だった。
 薬を飲み終えたところで、蓮さんは私を抱き上げて寝室まで運んでくれた。

「すみません、ご迷惑をかけて」

 もう目を開けていられない。
 横抱きにされたという羞恥心は頭の片隅にあるが、さっきよりも体調が悪化しているせいでそれどころじゃない。

「謝る必要はない。こんなになるまで無理して……」

 そっとベッドに降ろされる。
 布団を整えてくれた蓮さんは、それから私の前髪を避けて額に手を当てた。

 ひんやりとした彼の手が気持ちよくて、力が抜けていく。

「なにも心配することはない。よくなるまで、ゆっくり休め」

「はい」

 彼の手が離れていくことが寂しくて、追い求めたくなる。

 でも体のだるさには勝てず、そのまますっと意識を手放した。




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