今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
 出勤する蓮さんを見送り、私も出かける準備をする。

 数日ぶりに義実家を訪れると、お義母様が出迎えてくれた。

「心配してたのよ。やっぱり、あの日は引き留めるべきだったわ」

「すみません。お休みをいただいたおかげで、もう大丈夫ですから」

「あなたの大丈夫は、鵜呑みにしていけないって学びましたからね」

 怒ってみせたお義母様だが、怒りをぶつけられているわけじゃない。私を心配してくれているのだと、わずかに眉尻を下げた表情から伝わってくる。こういうところが蓮さんとよく似ていると、思わず頬が緩みそうになった。

「大変なときは、私を呼んでくれてもいいのよ」

「そんな、お忙しいのに」

「義娘のためなら、すぐに駆けつけるわよ」

 疑う隙もないほど、私をすっかり受け入れてくれている。この関係も、もう半年する頃に手放さなくていけないと思うと胸が苦しくてたまらない。

「……ありがとうございます」

「遠慮なんて、いらないのよ」

「今回は、蓮さんが仕事をセーブして私についていてくれたんです。彼には迷惑をかけちゃいましたが、おかげでそれほど長引かずに済みました」

 お義母様知っているだろうけれど、彼の優しさを知ってほしくてここ数日の様子を語って聞かせた。

「まあ、蓮が?」

「はい。蓮さんの作る卵がゆが、とっても美味しくて」

 想像以上の驚きを見せるお義母様に、小さく首を傾げる。

「そう。あの子があなたに……。ふたりの関係が上手くいっているようで、よかったわ」

 喜んでもらえてうれしいが、彼と本当に結婚するのは私じゃない。それを隠し続けることに、苦しさは大きくなっていくばかり。

 舞が、蓮さんとの結婚を諦めてくれたらいいのに……。

 そんな身勝手な願いまで抱いてしまう自分のことが、どんどん嫌になっていった。




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