今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
「どうかした?」
「い、いえ。素敵な車に、緊張してしまって」
「固くなる必要はない。君が慣れるように、今後はもっと一緒に出かけよう」
「……はい」
心の中は歓喜しているのに、結婚するのは私じゃないと思うと虚しくなる。
けれど今はせっかくデートをしているのだから、暗い考えは振り払った。
しばらく車を走らせてやって来たのは、高宮家の経営する最もハイクラスのホテルのレストラン。差し出された蓮さんに腕に手を添えて、中へ足を踏み入れた。
私が花嫁修業をすると決められたときから、高宮家の事業や同業他社との関係を調べていたから知っている。ここはホテルもレストランも、それぞれ五つ星に選ばれていたはずだ。
エントランスを入ったところで、思わず足を止めて見回した。
綺麗に着飾った女性やスーツ姿の男性など、複数の人が利用している。
「わ、私、場違いじゃないですか」
「そんなこと、あるものか」
誰もが洗練された雰囲気で、なんだか映画のワンシーンのようで圧倒させられる。
「君は、誰よりも綺麗だ」
「なっ……」
身をかがめた蓮さんが耳もとでささやくから、体が小さく震える。
「ほら、行こう」
促されるまま、慌てて足を動かす。
今のはきっと、怖気付く私の背中を押すために言ってくれたのだろう。もしくは、デートを盛り上げるために木を利かせてくれたのか。
そうでなければ、蓮さんが私に『綺麗だ』なんて言うはずがない。
思ってもいないことを言わせて、蓮さんは無理をしているんじゃないか。気になって隣の彼を見上げたが、口角をわずかに上げたその表情は機嫌よさそうに見えた。
予約しておいてくれたという最上階のレストランへ行き、スタッフに席へ案内される。贅沢にも東京の夜景が一望できる仕様になっており、まだ日が沈んで間もない今は、薄らと茜色が残る幻想的な光景を楽しめる。
私たちは奥の個室に案内され、蓮さんと向かい合って座る。
それから、運ばれて来た料理を楽しんだ。
「美味しい」
つつましい暮らしを好む祖母との生活は、私にとって心地よかった。ちょっとした贅沢はここぞというときだけで十分。
こんなに贅沢なご褒美は気が引けそうになるが、その美味しさに夢中になる。
完全に蓮さんの奢りというのはどうにも心苦しいけれど、初デートの記念としていつまでも残る特別な思い出になりそう。
「い、いえ。素敵な車に、緊張してしまって」
「固くなる必要はない。君が慣れるように、今後はもっと一緒に出かけよう」
「……はい」
心の中は歓喜しているのに、結婚するのは私じゃないと思うと虚しくなる。
けれど今はせっかくデートをしているのだから、暗い考えは振り払った。
しばらく車を走らせてやって来たのは、高宮家の経営する最もハイクラスのホテルのレストラン。差し出された蓮さんに腕に手を添えて、中へ足を踏み入れた。
私が花嫁修業をすると決められたときから、高宮家の事業や同業他社との関係を調べていたから知っている。ここはホテルもレストランも、それぞれ五つ星に選ばれていたはずだ。
エントランスを入ったところで、思わず足を止めて見回した。
綺麗に着飾った女性やスーツ姿の男性など、複数の人が利用している。
「わ、私、場違いじゃないですか」
「そんなこと、あるものか」
誰もが洗練された雰囲気で、なんだか映画のワンシーンのようで圧倒させられる。
「君は、誰よりも綺麗だ」
「なっ……」
身をかがめた蓮さんが耳もとでささやくから、体が小さく震える。
「ほら、行こう」
促されるまま、慌てて足を動かす。
今のはきっと、怖気付く私の背中を押すために言ってくれたのだろう。もしくは、デートを盛り上げるために木を利かせてくれたのか。
そうでなければ、蓮さんが私に『綺麗だ』なんて言うはずがない。
思ってもいないことを言わせて、蓮さんは無理をしているんじゃないか。気になって隣の彼を見上げたが、口角をわずかに上げたその表情は機嫌よさそうに見えた。
予約しておいてくれたという最上階のレストランへ行き、スタッフに席へ案内される。贅沢にも東京の夜景が一望できる仕様になっており、まだ日が沈んで間もない今は、薄らと茜色が残る幻想的な光景を楽しめる。
私たちは奥の個室に案内され、蓮さんと向かい合って座る。
それから、運ばれて来た料理を楽しんだ。
「美味しい」
つつましい暮らしを好む祖母との生活は、私にとって心地よかった。ちょっとした贅沢はここぞというときだけで十分。
こんなに贅沢なご褒美は気が引けそうになるが、その美味しさに夢中になる。
完全に蓮さんの奢りというのはどうにも心苦しいけれど、初デートの記念としていつまでも残る特別な思い出になりそう。