今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
 翌日になり、義実家からの帰り道に予約しておいた産婦人科に立ち寄った。

「妊娠していますね」

 人生の一大事を、あっさりと告げられる。

「……そう、ですか」

 妊娠の可能性があると思っていたせいか、表面上は意外と冷静に返せた。

 とはいえ、これからどうしたらいいのか不安しかない。

 蓮さんとの子を身ごもった状態では、ますます実家に帰るわけがない。とにかく、舞や両親には絶対に知られたらだめだ。

 それなら、蓮さんやお義母様に妊娠を打ち明ける?
 でも、それでは舞との入れ替わりを明かすことになる。高宮家を騙したと明るみになったら、藤沢屋はどうなるだろうか。

 自分の抱えているものの大きさを、あらためて突きつけられるようで怖くなる。

 仕事も失ってしまったし、蓮さんのもとを去った後、とても子どもを育てられる状況にない。どうにかしないとと、気ばかり焦る。

 そこまで考えて、ふと自分には堕胎をするつもりがまったくないことに気づいた。

「中絶するなんて、絶対に無理」

 育てていける見通しもないのに、産みたいなんて無責任だってわかっている。
 でも蓮さんとの子を諦めるなんて、私にはできない。

「なんとかしないと」

 とにかく、妊娠したことは誰にも知られてはいけない。この秘密だけは絶対に守り通すと誓いながら、家路を急いだ。






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