今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
 それから数日後の夜。
 早く帰宅できた蓮さんと、夕食後にリビングで過ごしていた。

「結婚式は、来年の初秋になりそうだ」

「そう、ですか」

 なんとか笑みを返す。

 とにかく早く式を挙げたいという蓮さんの希望と、しっかり準備をするために再来年の春にというお義母様の言い分は食い違っていた。そこで、間をとって秋頃にと決まったという。

「涼しくなってくる頃なら、招待される人も出席しやすいでしょうね」

 実際に彼の隣に立つのは、舞だ。その頃には、私はもう別の人生を歩み始めているはず。

「最近の君は、服装の好みが変わったのか?」

「え?」

 唐突に話題を変えられて、困惑する。

「そういう雰囲気も、よく似合っている」

「あ、ありがとうございます。こういうのも好きだなと思って」

 なんとか返したが、彼はなにかに勘づいているのかと妙に焦ってしまう。

 ここのところ、わずかにお腹が膨らんできている。
 着ているものでごまかせる範囲だが、手持ちの服では腰をしめつけてしまう。だから、室内ではゆったりとしたワンピースやチュニックで過ごしている。

 動きやすさと温かさを重視した、ナチュラルな色合いのものばかり。もともと好きな系統だから、私としては違和感がなかった。

 けれど、休日に私が見せていたのは舞仕様の服装だ。雰囲気はまったく違う。
 実家の母からは、季節の変化に合わせて舞のおさがりを送られてきていた。妊娠がわかってからは、それらにいっさい袖を通していない。着られないだけではなくて、すべてに従うわけではないという私なりの抵抗でもある。

「そうか。それならまた、俺からも君の好みの服をプレゼントさせてくれ」

「うれしいです」

 受け取る機会は、もうないのだろう。

 寂しい気持ちを押し殺して明るく返すと、蓮さんは眉を下げた。
 その表情にわずかな違和感を覚えたのは、彼としてはもっと華やかな装いを期待していたからかもしれない。

 私の感情を抜きにしたら、舞との入れ替わり時期が早くなったのは正解だ。さすがに年明けともなればお腹はもっと大きくなるだろうから、周囲に疑念を抱かせかねない。

 あとどれくらい、蓮さんの隣にいられるだろうか。残された数日間は、これまで以上に彼を支えたい。

 そう望んでいたが、別れの日は唐突にやってきた。






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