バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
「あの、忘れてたわけじゃないんですけど、でも随分と印象が変わっていたので」
「ああ、瓶底みたいな眼鏡だったからな、俺」
「コンタクトにしたんですか?」
「ICLだよ」
鷹木は悪戯っぽく、にこりと微笑んだ。眼鏡の奥に隠されていた切れ長の瞳が、今は遮るものなく詩織を捉えている。
「お名前の漢字も覚えていなくて、すぐに気付けなくてごめんなさい」
詩織は申し訳なさから、胸の前でぎゅっと手を握りしめた。
これほど大きな法律事務所の先生が、まさかあの時の彼だとは思ってもみなかったのだ。
「いや、名前を覚えていてもらえただけでうれしいよ」
鷹木の顔に、これまで見たこともないような満面の笑みが浮かんだ。
貴大に見せていた厳しい表情が完全に消え、まるで少年のような輝きを取り戻した様子に、詩織はどきりと胸を突かれる。
「覚えていますよ、だって、三年連続全国大会優勝ですもの」
「良かった。じゃあ、ついでにこれも覚えておいて」
鷹木は、一歩、詩織との距離を詰めた。
わずかに背を屈め、視線の高さを詩織に正確に合わせる。
「いつも、どこにいても、詩織さんに会えないだろうかと君を探していた。詩織さんがうちに相談しにきてくれた時、奇跡だと思ったよ」
彼の声の端々から熱い何かが押し寄せてくる。
「君があんな男に傷つけられたことは言い表しようのないほど悔しいけれど、でも、俺の手で離婚の手助けができて本当に良かった」
鷹木の真摯な言葉に、詩織の胸の奥からも、言い表しようのない気持ちが溢れてくる。
遠い昔、どこかに忘れてきてしまった、甘酸っぱいむず痒さが胸をくすぐった。
「あ、ありがとうございます。本当に感謝して……」
お礼を言おうと言葉を紡ぐ。
しかし、じっと自分を凝視してくる鷹木の、どこか熱い輝きをはらんだ強い視線に射すくめられ、言葉が最後まで出てこなくなってしまう。
彼の視線の奥に隠された、本当の意味をうまく咀嚼できない。
息が詰まる。
突然心臓が速く脈打ち始め、指先が緊張で強張っていく。
鷹木は迷いのない動作で手を伸ばし、詩織の、荒れた小さな手を、そっと包み込むようにして触れた。
驚きで身体を強張らせる詩織に対して、彼は手のひらから伝わる確かな温もりとともに、ひと言ずつ、刻みつけるように囁いた。
「大事なことだからもう一度言うよ。俺はずっと、ずっと、詩織さんに会いたいと思っていた」
規律正しい冷たさ。厳しい表情。そういった弁護士らしさの全てが取り払われた鷹木の顔には、触れたら溶けてしまいそうなほど甘い笑顔が浮かんでいる。
ーートク……トク……
一年間、貴大から触れられることのないまま冷たく乾ききっていた詩織の胸の奥で、忘れかけていた熱い鼓動が、音を立てて跳ね上がった。