バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
ーーピコン
職場の休憩室で遅めの昼休憩を取っていると、スマートフォンの短い通知音が響いた。
美味しそうなラーメンの写真が飛び込んでくる。
『定番の豚骨ラーメンだよ』
「わぁ……おいしそう」
思わず声が漏れた。
持参した弁当から玉子焼きを口に入れ、詩織は鷹木への返信を打ち込む。
「『おいしそうですね。今晩は私も豚骨ラーメンを食べます』、と」
送信ボタンを押すと、すぐに返信が来る。
『夜は接待でもつ鍋なんだ。太りそうで怖い』
文章の末尾には、頭を抱えて困っている可愛らしいキャラクターのスタンプが添えられている。
詩織は思わず吹き出す。
「鷹木さん、全然太ってないのに……」
定期的にジムに通っていると、前に話していた。
猫に驚いた詩織を彼が抱き寄せてくれたとき、服越しに伝わってきた彼の身体の逞しさに驚いた。
硬く鍛え上げられた筋肉の感触、厚い胸板、そして自分を丸ごと包み込んでくれたあの大きな腕を思い出す。
それに引き換え、自分はどうだろう。
離婚直後は精神的なストレスからやつれていたが、鷹木に毎週のように美味しいお店へ連れて行ってもらううちに、すっかり体重が元に戻りつつあった。
むしろ、これからは太らないように心配しなければいけない。
もし、あの頼もしい身体を持つ彼に、自分の締まりのない身体を見せるようなことになったら……。
具体的に想像してしまった瞬間、詩織の顔にボッと火がつく。
「なし! 今の想像はなし!」
誰もいない休憩室で、詩織は自分の頭の上でパタパタと激しく両手を振る。よこしまな思考を力尽くで吹き飛ばそうと頭を振った。
「それにだいたい、鷹木さんが私とそういうこと……」
呟きかけて、詩織はハッと口をつぐむ。
彼は、そんなことをしたいと思ってくれているのだろうか?
一度も男性からまともに求められたことのない自分と。元夫にさえ、女として相手にされなかった自分と。
火照っていた頭が急激に冷えていく。
「……私、女としての魅力がないんだもん。鷹木さんも、きっとそんな気になれないよね」
好きだと言ってくれたこと。
真っ直ぐに好意を示してくれること。
それは単純に嬉しく、詩織の毎日を明るく彩ってくれている。
しかし、実際に男女としてのお付き合いに進むとなれば、話は全く別だ。
女性としての魅力がない自分に、きっと鷹木はがっかりする。
詩織は、弁当箱の蓋を静かに閉めた。
*