バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
第13話:帰ってきた初恋
「慧! お前また別れたのかよ」
同じ学部の友人が呆れたような声をかけてくる。
講義が終わり、キャンパス内に広がる緑豊かな並木道を歩いている時だった。
「俺がふられたんだよ。向こうから告白してきたのに『こんなにつまらない人だと思わなかった』って。いつものパターンだ」
鷹木は教科書を小脇に抱え、自嘲気味に愚痴をこぼした。
うっすらとした初恋は、あの弁論大会当日にもろくも崩れ去っていた。
大会の終了後、ロビーで他校の男子と仲良さそうに話していた姿。その男を見上げて嬉しそうに笑っていた朝比奈さんの表情。
好きなのだ、彼女はあの男のことが。
自分が立ち入る隙などどこにもないと、その一瞬ではっきりと悟らされた。
それでも、本番前に緊張を和らげてくれた朝比奈詩織という存在を、忘れたことは一度もない。
まさか同じ大学に進学して来てはくれないかと微かな夢を見たこともあったが、二年が経ち、三年が過ぎても、広いキャンパスですれ違うことはなかった。
当たり前だ。そんな漫画みたいな都合の良い展開、現実にあるわけがない。
大学に入る直前、煩わしい眼鏡をやめてICLの手術を受けた。
災害時のリスクも減るという合理的な理由からだったが、視界がクリアになると同時に、周囲の反応が劇的に変わった。
眼鏡を外したせいなのか、なぜかやたらと女性から声をかけられるようになったのだ。
人並みに男女交際への興味はあった。
だから、入学して最初に告白してくれた人と交際することにした。
初めての彼女は、二つ年上の先輩だった。
手を繋ぎ、出かけ、大学生らしい男女交際におけるひと通りの事は経験した。だが、数ヶ月が経った頃、冷え切った声で告げられた。
『慧って、すごいつまんないね』
二人の関係は終わった。
胸が痛むことも、悲しくなることもなかった。
その後も同級生、後輩先輩問わず、告白された時に特定の交際相手がいなければ大体の相手と付き合った。しかし、いつも結末は同じだ。
『そんな人だと思わなかった』
『もっと楽しいお付き合いがしたい』
『私より勉強の方が好きだよね』
誰も彼もがそう言い残して鷹木の元を去っていく。
回数を重ねるごとに、自分は心底、女性からしたらつまらない人間なのだと確かめるだけの作業になっていった。
大学を卒業し、司法試験を経て弁護士として働き始めてからは、完全に独り身を貫いている。
その方が無駄な揉め事や面倒が少ないし、女性と会う時間があるくらいなら、一件でも多く仕事をこなしたかった。