バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
第2話:やはり……?
「彼、負けなしだから大丈夫だよ」
応接室に戻ると、鈴川所長は詩織を安心させるように朗らかに笑いかけた。
「じゃあ、さっきは概要だけ伺ったので、もう少し細かい内容を……」
鈴川が詩織に促す。しかし、それを遮るように鷹木が告げた。
「所長、その必要はありません。このご依頼は私が受けますので、所長はお戻りいただいて結構です」
「え? でも鷹木くん……」
鈴川が丸い目をさらに丸くして鷹木を見る。詩織もまた、彼のあまりの態度の変化に戸惑いを隠せず、小さく息を呑んだ。
「問題ありません。この件に関しては、私が全力で承ります」
鷹木の言葉には、一切の迷いも妥協もない。
規律正しいその声が部屋に響き、鈴川はしばらく呆気に取られたように鷹木の顔を見た。が、やがて降参したように両手を軽く上げる。
「そう、じゃあお任せしよう」
木目調の長机を挟んで、詩織と鷹木は二人きりで対峙する。
室内には静かな空気が流れた。
手元に置かれたノートパソコンを開く彼の指先は長く、爪の先まで綺麗に整えられている。
「名字で呼ばれるのはお嫌でしょう。差し支えなければ、詩織さんとお呼びしても?」
唐突な提案に、詩織は驚きで目を瞬かせた。
夫の名字である『成瀬』と呼ばれるたびに、胸の奥がキリキリと痛んでいたのは事実だ。彼はそれを察してくれたのだろうか。
「もちろんです。ですが……あの、鷹木さん、実は私、まだお願いするかどうかは決めていなくて」
詩織は膝の上で何度も指を絡ませながら、意を決して言葉を紡いだ。
「さっき所長さんにはお伝えしたんですけど、今日はあくまで相談で、その……費用ですとか、お伺いしてから決めたいと」
デスクの向こう側にいる鷹木は、詩織の言葉を遮ることなく、静かに耳を傾けている。その真摯な眼差しが、かえって詩織の胸を締め付けた。
「お恥ずかしながら、金額によってはお支払いできないかもしれないんです。紹介してくれた友達にも『費用面も含めて相談してきなさい』と言われて……」
詩織の喉が小さく震えた。