バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される

「あなたが、そう教えてくれた。私は、他者から尊重されるべき一人の人間なんです。あの人のサンドバックになるために生きているんじゃない。自分のために生きて良い人間なんです」

 鷹木の目が再び潤んでいく。
 いや、視界が滲んでいるのは、詩織の目のほうなのかもしれなかった。

「見返りはいらない。笑っていてくれるだけで良いって、あなたの声が聞こえたの。だから……私の心を守ってくれて、ありがとう」

 どちらからともなく、二人の身体が引き寄せられた。
 詩織は鷹木の広い背に腕を回す。鷹木もまた、これ以上ないほどの力で、詩織を強く抱きしめ返した。



 互いの体温を確かめ合うようにして、どれだけの時間が経っただろうか。

 鷹木の胸の音を感じながら、詩織は静かに息を吸い込んだ。もう、自分の気持ちを偽ったり、遠慮したりする必要はどこにもない。
 そう思った瞬間、自然と、声が漏れた。

「好き。私、鷹木さんのことが好きです」
「……本当に?」

 鷹木は弾かれたように身体を離す。
 信じられないものを見たかのような、驚きに満ちた顔で詩織を凝視した。

 詩織は彼の真っ直ぐな瞳を見つめながら、深く、確かに頷いてみせる。

 鷹木の顔が、これ以上ないほど愛おしそうに、くしゃくしゃに歪んだ。涙の跡が残るその顔に、子供のような純粋な喜びが広がる。

 詩織は少しだけ照れくささに頬を染めながら、言葉を紡いだ。

「鷹木さん、私バツイチだけど、私とお付き合いしていただけますか?」
「詩織さん……ずるいよ。いま俺が言おうと思ってたのに」

 鷹木は困ったように笑うと、再び詩織の顔を引き寄せた。

 唇が、そっと重なる。

 言葉を交わす隙間さえも惜しむような、ただ互いの存在を確かめ合うためだけの、静かで優しいキスだった。
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