バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
第17話:ごめんなさい
「もぉぉあの男、一生許さないんだから!」
有希が半分涙目になりながら目の前のテーブルを叩いた。
成瀬貴大に拉致されたあの日から一週間が経った。詩織の膝には、まだ白いガーゼが貼られたままだ。それでも、体調自体はすっかり落ち着き、元気を取り戻している。
警察による多くの事情聴取や手続きが一通り落ち着いた。
それを待っていたかのように、有希が、詩織が鷹木と同居するマンションまでお見舞いに来てくれたのだ。
「ありがとう。でも、もう忘れようと思って」
「詩織ぃ」
「バカみたいじゃない、あんな男のことずっと覚えて恨んでいるのも」
詩織は紅茶のカップを両手で包み込みながら、にこりと穏やかに笑う。
現在も、貴大の取り調べは続いている。
圧迫痕が残るほどに手首を掴み、膝を切るような強い力で床に打ちつけた。詩織に対する暴力の事実は明確であり、言い逃れの余地はない。
これから始まる裁判における最大の争点は、詩織が無理矢理車に押し込まれて連れて行かれたかどうか。つまり『誘拐』に値するかどうかという点になる。
貴大は取調室で『詩織が自主的についてきた』と主張し続けているらしい。
しかし、成瀬家の向かいにある民家が設置していた防犯カメラには、貴大が詩織の腕を強引に掴み、引きずるようにして車から降ろし自宅へと連れ込んでいく一部始終が鮮明に記録されていた。
客観的な映像が残っている以上、彼の身勝手な言い分は通らない。
また、勤め先の市役所も懲戒免職処分になることが確実視されている。
『課長に聞いてくれ。課長は俺の家庭の真実を知っている。俺は悪くない』と泣きついたそうだが、当の課長は、警察の調べに対し『プライベートのことは何も知らない』と言い切ったという。
貴大が職場で行っていたパワハラ行為も同時に問題視されているらしい。どちらにせよ、同じ職には戻れない。
足の悪くなった元義母は、都外の施設へ行くらしい。元々か、一連の騒動によるショックもあってか、認知症の診断が下されたのだという。
あのゴミの山のような家でひとり暮らしを続けることは不可能だ。
暗い悪縁が次々と清算されていく中、鷹木と詩織は、晴れて正式な恋人同士となった。
一晩の入院を経て詩織が退院した日。この部屋に帰ると、リビングのテーブルには大きな花束が用意されていた。
鷹木は、少し耳を赤くしながら、その場で真っ直ぐに気持ちを言葉にしてくれたのだ。
『改めて……俺と付き合ってほしい』
病院のベッドの上で詩織から先に言われてしまったことを気にしていたらしい。
どうしても自分自身の口から改めて申し込みたかったのだと白状する彼の、少し拗ねたように恥ずかしがるかわいらしさに、詩織は思わず声をあげて笑ってしまった。
「で、どうなの、新婚生活は?」
有希がソファに深く腰掛け、ニヤニヤとした意地の悪い笑みを浮かべて尋ねてきた。